苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

幻の苔を探して:キノボリオウゴンゴケ

投稿日:2017年2月28日 更新日:


※イメージ画像はおそらくハマキゴケ。センボンゴケ属でもキノボリオウゴンゴケではありません。

東京で一番苔の見られる場所、高尾山に行くことになりました。苔を見るようになってからは5回目くらいでしょうか。とはいえ、休日は登山客で賑わうのでゆっくり苔を見ることが難しい。現地で調べ出すときりがないので、あらかじめ予習しておこうと思い、高尾山で見られる苔について調べてみました。

もっとも簡単に入手できる高尾山近辺の苔リストは、井上浩著『コケ-フィールド図鑑』です。

井上先生が高尾山に行って撮影した苔がかなりたくさん収録されています。とはいえ、100種を超えると言われている高尾山の苔のうち、数十種類なので完全に網羅しているわけではありません。もっと知りたいという好奇心にかられて調べていると、神奈川県にある公益財団法人 平岡環境科学研究所が発行している「自然科学環境研究」という論文集に高尾山の苔を調べた論文があることがわかりました。1995年、1996年に発行されている号に収められているようです。しかし、残念なことにオンラインでは論文の中身まで読むことができませんでした。国会図書館にオンラインデータで所蔵されていることを確認したのでコピーを取ってきました。国会図書館の掲示が見づらくて難儀した件はおいておいて。

コピーした論文は、1995年段階の高尾山なので、それから20年がたっている現在とは生息している苔の種類は異なることでしょう。それでも見ておくにこしたことはない。読み進めていると現在とは分類が異なることもままあります。それどころか、種の名前自体が変わってしまっているものまで。中でも気になったのがタイトルにも記した「キノボリオウゴンゴケ」。黄金ゴケという名前だけでもすごいのに、木に登ってしまう。いったい何者!?と思って、苔界のドラえもんこと平凡社の図鑑をひもときます。

しかし、索引を見ても「キノボリオウゴンゴケ」はいませんでした。上記したように、研究が進むにつれて名前が変わってしまったようです。名前が変わるのにはいろいろな理由がありそうです。別の種と実は同じだったので片方の名前を消してしまうとか、分類状の「属」から変わってしまって種の名前も変わるとか。そうなると日本語の名前「和名」で調べることはできないので、ラテン語の学名から調べることになります。

キノボリオウゴンゴケの学名は、Leptodontium pergemmascens。Leptodontiumは確かに「オウゴンゴケ属」でした。しかし、pergemmascensの名前をもつ苔は「サジバオウゴンゴケ」という名前です。あれ……? 

名前の後には「(新称)」とあります。つまり、キノボリオウゴンゴケからサジバオウゴンゴケに名前が変えられてしまったのです。図鑑では分類表に小さく記載されているだけで、「葉はさじ形〜舌形」とありますから、形から判断されて名前を変えられてしまったのかも。

サジバオウゴンゴケ、国内で最初に見つかったのは杉並区の善福寺川公園なのだとか。23区から新種が見つかるなんてあるんですね! 見つかった1993年の論文では「キノボリオウゴンゴケ」と命名されています。名前が変わった理由までは見つけられませんでしたが、たった一つの苔にも名前の変遷があって、それを追いかけていくのもまた楽しいものです。木に生えているセンボンゴケ属、今度の高尾山でも探してみようと思います。

ad02

ad01




ad02

ad01




-Bryophytes
-,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

苔観察日記 高尾山より空いている石老山

高尾山と中央線沿線の山 陣馬山・生藤山・権現山・扇山・百蔵山・岩殿山・石老山・九鬼山など (ヤマケイアルペンガイド) 東京都心から苔観察に行く場合、もっともいい場所は高尾山6号路だと思う。新宿から1時 …

苔観察日記:鎌倉中央公園〜鎌倉駅

新版鎌倉本 (エイムック 3477) 鎌倉とはあまり相性が良くない。ケチのつけ始めは中学生の修学旅行だ。県内のほとんどの中学校は修学旅行で京都に行くのだけど、県の条例か何かで決められている距離の都合上 …

苔界の第一人者児玉務先生追悼・著作集『ええもん見つけたな』で号泣

SFとかラテンアメリカ文学にはまった時、真っ先にやったのは読むことよりも買うことでした。どちらも21世紀になってから本格的に触れたので、20世紀に出版されたおもしろいけど売れない本というのはかなり稀少 …

東京には苔がない だが温室には苔がある

苔をおもしろいと思ってから初めての冬だ。春・夏・秋と思い立てば自然の苔を見てきたけど、冬はちょっと事情がちがう。 苔は大気汚染に強いハマキゴケやジャゴケなどを除くと、都心にはあまり生息していない。変わ …

苔観察日記 子の権現

苔の中には石灰岩を好む種がいる。一般的な植物は石灰岩を好まない(栄養が足りないらしい)が、逆に植物にとっての栄養がじゃまになる苔が石灰岩の地域に適応したということなんだろうか。石灰岩といえば秩父。セメ …