東京の西の果て、あきる野市で立派な樫の木と美しいカサゴケモドキを見てきました

Bryophytes
山抱きの大樫

11月も更けていく時期になると、山へ行っても茸や粘菌はなかなか見つからない。でも、苔の中には蒴を出して冬を越す種もあるという。不思議だ。胞子を出す器官を作ったまま越冬したら、なんとなく器官ごと冬の寒さに負けてしまいそうに思える。でも、多くの苔は八ヶ岳をはじめとして冬は雪が積もる地域に生えているので、もしかしたら雪解けの水を生殖に利用したりするのかもしれないな……。

今回も「苔の旅」に同行させていただき、JR武蔵五日市駅から歩いてあきる野市にある「山抱きの大樫」周辺を散策。山を抱くとはだいぶ大きく出たな。そもそも、樫の木はあまり関東で見ないような気がすると思ってWikipediaを見ると、関東以南にある樹木だそう。そんな木が東京都とはいえかなり山がちなところに生えているというのが不思議。石灰岩の上に生えているというのもとても不思議。

武蔵五日市駅から歩きだすとすぐにラセンゴケのお出迎え。コンクリートの壁一面に生えている。ラセンゴケは中肋が螺旋のようにうねっていることから付けられた名前らしいのですが、わたしは「植物体全体が螺旋のようにねじれている」ことからつけられたと勝手に解釈していました。ねじれ方の詳細は「こけ雑記」さんに詳しいです。数日前に降った雪などの水分が多くて細かいところを観察しようと思うと写真では反射して見えづらいのですが、ルーペだと確かに。もっとルーペも練習しないといけないと痛感しました。

ラセンゴケ

ラセンゴケ

序盤はスナゴケやハリガネゴケ、ハマキゴケ、チュウゴクネジクチゴケ、ハイゴケなどの小型で日当たりのよい場所を好む種が多い。このあたりは小さくて特徴も似ているから見分けるのが難しい。また、(本当はいけないんだけど)あまり珍しくもないので一人だとスルーしてしまうことが多い。そういう自分では見逃しがちな苔をじっくり見ることができるのは観察会のいいところ。雪解け水が蜘蛛の巣に溜まって水玉になっていたりと、ミクロの世界は苔以外にも美しいものがたくさんありました。

ハイゴケ?の蒴

ハイゴケ?の蒴

謎の蘚類。無性芽がたくさんついている

謎の蘚類。無性芽がたくさんついている

参加者は9人。わたしがビリの申込者

参加者は9人。わたしがビリの申込者

お昼をいただいたお堂の裏あたりからそろそろ苔類が出てきて、「山抱きの大樫」に至る登りになるとクラマゴケモドキやフルノコゴケと思しき苔類がしっかり出てきてうれしい。クラマゴケモドキは樫の木の土台になっている石灰岩にびっしりと生えている。苔類にしてはそこそこ大型なので、トサホラゴケモドキやヤマトヨウジョウゴケのようにルーペを使って目を凝らさないと見えないような種よりもキャッチー。とはいっても、なんとなくゴツゴツしていて、「クラマゴケモドキ大好き」って叫ぶ人はわたし以外にいませんでした。

クラマゴケモドキ背面(表)

クラマゴケモドキ背面(表)

クラマゴケモドキ腹面(裏)茎部分に大きな腹葉(ふくよう)が見えます

クラマゴケモドキ腹面(裏)茎部分に大きな腹葉(ふくよう)が見えます

写りが悪いのですが葉の縮れ方からチヂミカヤゴケかと

写りが悪いのですが葉の縮れ方からチヂミカヤゴケかと

古いノコギリのようだと言われるフルノコゴケだと思うのですが……

古いノコギリのようだと言われるフルノコゴケだと思うのですが……

いよいよ「山抱きの大樫」。周囲を植林された杉に囲まれた中、横に枝を張り渡す樫の木はひときわ目立つ。聞けば山の下にあるお寺が管理されているとかで、杉の植林の際に残したのではないか、という話。この日デビューさせた超がつくほどの広角レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」でも入り切らないくらい。石灰岩を抱くようにして生えているのも不思議で、杉が植林される前はこの辺一体に樫の木が生えていたのかもしれないと想像するのも楽しい。実際、今のように植林されたのは戦後の経済成長期だったようです(参考:中央区の森環境ふれあい村構想)。

山抱きの大樫

山抱きの大樫

ここで苔の観察はひとまず終了。山の端に日が落ちてだいぶ暗くなりました。このあたりにはコンビニはもちろん、ほとんど店舗はありませんが、NHKで放送されていた人形劇「プリンプリン物語」の人形を作った作家友永詔三氏のアトリエ兼美術館となる「深沢小さな美術館」があります。番組で実際に使われたという人形がずらりと並び、茸のランプや縄文時代の女性を彷彿させる細長い彫像などが展示されています。木造の落ち着いた雰囲気で、薪のストーブにあたりながらコーヒーをいただくこともできます。我々は大所帯なのでこちらを出てから数分ほど歩いて、食べログにも掲載されていない秘密のスポット「お休み処 松葉」さんにお邪魔しました。ジンジャーティーや栗をほの甘く煮たデザートが身体に良さそうな感じ。10人規模なのに座敷の炬燵に案内してもらいゆっくりさせていただきました。鹿のカレーも気になるけど、外はすっかり真っ暗なので持ってきたLEDの電灯を照らしながら帰路につきました。

そうそう、後半のどこかで珍しいカサゴケモドキを発見! 自分では見つけたことがなくて、こういうイベントの時に誰かが見つけたのに追随しているので、今度出かける時は自力で発見したいものです。……独占欲が強い? モドキなんて名前が付いているけれども、カサゴケ・オオカサゴケ・カサゴケモドキのちがいは葉の数くらいで同じ種なのです。コカサゴケ・チュウカサゴケ・オオカサゴケくらいにならなかったんでしょうか……。

カサゴケモドキ。いつ見ても美しい

カサゴケモドキ。いつ見ても美しい

これで年内の苔観察は打ち止め、かな。雪解けの2月あたりから蒴が出始めるので、それまで知識を蓄えモードに入り、文献を読んだり図鑑を見たりするフェーズになります。Vixenのコケ観察セットを揃えて春を待ちます。

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