苔についてもっと知りたいなら、論文をチェック

Bryophytes

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苔に関する本は日本に何冊あるのだろう。と思ったらコケイロさんが既にまとめていらっしゃって、その数34冊。もちろん、古い本の中にはここで紹介されていないものもあるだろうから、日本語で読める本はおおよそ50冊というところか。被子植物や菌類に比べるとだいぶ少ない(羊歯はどうなのだろう?)けれども、逆にこれだけ書籍としてまとめられている国もそれほどないだろう。

とはいえ、決して手に入りやすい本ばかりではないし、生物関連の本を置いていない書店も多いだろう。最寄りの駅にある5坪程度の書店は雑誌と売れ筋の本が並んでいるだけだし、東京でさえ最寄りに書店がない駅が増えているという。そんな状況で苔に関する本を入手するのは至難の業だから、オンライン書店に流れてしまうのも仕方ないのか……。いや、そもそも苔の本を入手しようとする人がもっと少ないことは分かっているつもりですが。

苔を知るにつれて、もっと個別の特徴を知りたいと思ったとき、検索で出会ったのが論文だった。日本蘚苔類学会が出している、その名も蘚苔類研究は、うれしいことに一部は無料でCiNiiに公開されている。英語の論文が多いけれども、中には日本語の論文もあり、平凡社の図鑑や各書物には書かれていない苔の話を読むことができる。個人的なおすすめは秋山弘之氏による「新・コケ百選」シリーズで、図鑑に載っていたらうれしい内容が詳しく書かれている。過去8回は「植物の自然誌プランタ」に掲載されていたそうなので、合わせて書籍になったら絶対買います。

文系だったので、論文のタイトルというのは堅苦しくぴしっと決まった内容でなければいけないと思い込んできた。「中島敦『悟浄出世』における「病気」の定義について」みたいな(わたしは確かこんな感じの卒論でした)。だから、「オキナワヤスデゴケ(ヤスデゴケ科,タイ類)が和歌山県で見つかる」のように動詞で終わるタイトルを見たときは斬新な驚きがあった。カジュアル。さらにその論文中で参照されているタイトルに「ええもん見つけたな.児玉務先生追悼著作集」とある。「ええもん見つけたな」、すごい楽しそう! わたしも負けずにええもんを見つけたい、となります。気軽に新しいものを見つけた喜びがあふれていて、「論文」という堅苦しいイメージが払拭されます。

もちろんオンラインで読めない論文もまだまだ多いけれども、「蘚苔類研究」を順番に読んでいるだけで未知の苔に対するあこがれが高まり、どこに行けばどんな苔が見られるかをある程度は分かるようになった。蘚苔類学会に加入すれば「蘚苔類研究」が読めるようになるそうです。入らねばなるまい。公開されている論文というのは一通り入門書を読んだ後に触れておくと、最先端の研究者がどのような興味を持って調べているのかが分かるので、苔に限らずどのジャンルでも読むべきなのかもしれない。新しい情報よりも、しっかり調べられた過去の蓄積の方がずっと役に立つはず。

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