苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

苔についてもっと知りたいなら、論文をチェック

投稿日:


20160816b

苔に関する本は日本に何冊あるのだろう。と思ったらコケイロさんが既にまとめていらっしゃって、その数34冊。もちろん、古い本の中にはここで紹介されていないものもあるだろうから、日本語で読める本はおおよそ50冊というところか。被子植物や菌類に比べるとだいぶ少ない(羊歯はどうなのだろう?)けれども、逆にこれだけ書籍としてまとめられている国もそれほどないだろう。

とはいえ、決して手に入りやすい本ばかりではないし、生物関連の本を置いていない書店も多いだろう。最寄りの駅にある5坪程度の書店は雑誌と売れ筋の本が並んでいるだけだし、東京でさえ最寄りに書店がない駅が増えているという。そんな状況で苔に関する本を入手するのは至難の業だから、オンライン書店に流れてしまうのも仕方ないのか……。いや、そもそも苔の本を入手しようとする人がもっと少ないことは分かっているつもりですが。

苔を知るにつれて、もっと個別の特徴を知りたいと思ったとき、検索で出会ったのが論文だった。日本蘚苔類学会が出している、その名も蘚苔類研究は、うれしいことに一部は無料でCiNiiに公開されている。英語の論文が多いけれども、中には日本語の論文もあり、平凡社の図鑑や各書物には書かれていない苔の話を読むことができる。個人的なおすすめは秋山弘之氏による「新・コケ百選」シリーズで、図鑑に載っていたらうれしい内容が詳しく書かれている。過去8回は「植物の自然誌プランタ」に掲載されていたそうなので、合わせて書籍になったら絶対買います。

文系だったので、論文のタイトルというのは堅苦しくぴしっと決まった内容でなければいけないと思い込んできた。「中島敦『悟浄出世』における「病気」の定義について」みたいな(わたしは確かこんな感じの卒論でした)。だから、「オキナワヤスデゴケ(ヤスデゴケ科,タイ類)が和歌山県で見つかる」のように動詞で終わるタイトルを見たときは斬新な驚きがあった。カジュアル。さらにその論文中で参照されているタイトルに「ええもん見つけたな.児玉務先生追悼著作集」とある。「ええもん見つけたな」、すごい楽しそう! わたしも負けずにええもんを見つけたい、となります。気軽に新しいものを見つけた喜びがあふれていて、「論文」という堅苦しいイメージが払拭されます。

もちろんオンラインで読めない論文もまだまだ多いけれども、「蘚苔類研究」を順番に読んでいるだけで未知の苔に対するあこがれが高まり、どこに行けばどんな苔が見られるかをある程度は分かるようになった。蘚苔類学会に加入すれば「蘚苔類研究」が読めるようになるそうです。入らねばなるまい。公開されている論文というのは一通り入門書を読んだ後に触れておくと、最先端の研究者がどのような興味を持って調べているのかが分かるので、苔に限らずどのジャンルでも読むべきなのかもしれない。新しい情報よりも、しっかり調べられた過去の蓄積の方がずっと役に立つはず。

ad02

ad01




ad02

ad01




-Bryophytes
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

風にそよぐキヨスミイトゴケ(Barbella flagellifera)

木の枝などにぶらさがり、風にそよぐキヨスミイトゴケ。見慣れなければ葉の一部として見過ごしてしまいそうだけど、一度気づくと嬉しくなりそれからはずっと探してしまう。名前の通り細く糸のように絡まり、樹木だけ …

ハネゴケの謎に挑む(1)チチブハネゴケ(Plagiochila flexuosa)?

羽のように見えるからハネゴケ。苔なんてみんな左右に葉が出て羽のように見えるように思えますが、羽のようと形容できる種は案外少ない。それでもクジャクゴケやホウオウゴケ(こちらは空想上の鳥ですが)のように鳥 …

苔観察日記 奥多摩

中公新書から出ている秋山弘之さん『苔の話』によると、苔を見るには梅雨がいいと書かれている。確かに濡れた苔は葉を開いてきれいな緑色になる。ただ、国立科学博物館の樋口先生によると「苔は濡れている時と乾燥し …

全長14kmのタマゴケロードでApple Mossを堪能

春はタマゴケ。ようよう赤くなりゆく蒴すこしあかりて、ということで、赤くなったタマゴケを見たい! と、個人的に命名したタマゴケロードに向かいました。総距離は14km……、朝からしゃきしゃき歩けば3時間程 …

コスギゴケ(Pogonatum inflexum)

苔を見始めた頃は、コスギゴケとナミガタタチゴケの区別がつかなかった。どちらも都心に生える苔の中では木に似た形で垂直に伸びる。葉の堅い感じが全くちがうので、きちんと見分けられるようになったのは数ヶ月たっ …