苔観察日記 高尾山より空いている石老山

Bryophytes
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東京都心から苔観察に行く場合、もっともいい場所は高尾山6号路だと思う。新宿から1時間程度で、登攀距離が短い。一説によると高尾山には100種類近くの蘚苔類がいるとか。しかし、ミシュランで高く評価される高尾山だけあって休日の混雑はかなりのもの。紅葉の季節などは登山道が行列になる有様だし、平日でも子どもたちの遠足に重なってしまうと立ち止まって苔を見るどころではない。

幸いに、秩父から高尾山付近にかけては同じ石灰岩をベースにした山なので、苔も似たような種類が多い。高尾山近辺で同様に川が流れ低い山を検索してみると、石老山を見つけた。JR中央本線で相模湖駅下車、「三ヶ木」行バスに乗って10分ほどで「石老山入口」バス停に着く。高尾山ほどではないが、軽登山としてはかなりアクセスしやすい場所にあるせいか、4月中旬に登った時には大勢の登山客がいたのはちょっと誤算。それでも、登山道は基本的に高尾山よりもずっと広いので、すれちがいが大変ということはないので、苔観察の穴場になるのではと期待して臨む。

結果的には苔観察としては高尾山に軍配が上がる。確かに変わった岩が多く苔もたくさん生えているが、高尾山ほどのバリエーションは見られなかった。なんとなく思いつく原因としては、大木が多いために日当たりがあまりよくないこと。そして、上りの顕鏡寺付近にはそれほど大きい川はなく、下りの相模湖レジャーランド前に出る道になって小川が現れたので、苔を見る分には顕鏡寺方面まで行く必要はないのかもしれない。

とはいえ、やはりすてきな苔たちが出迎えてくれるのはまちがいない。

コバノチョウチンゴケ

コバノチョウチンゴケ

コバノチョウチンゴケ、(勝手に)通称「コバチョウ」。蒴がたれさがりすぎず、ぽってりとした重みを感じさせるけど、実際にはわたしのがさつな指では感触がよくわからないくらいに小さい。

スギゴケと茸

スギゴケと茸

スギゴケときのこの山ぽいきのこ。スギゴケはメジャーだけど、生える場所に今ひとつ統一性が感じられない。別にしっかりとした湿度がある場所を好むわけではないらしく、これは山道のかなり日が当たる場所で見つけた。とはいえハマキゴケほど乾燥に強いわけでもなく、微妙なバランスを見つけるのだろうと思う。『ときめくコケ図鑑』には「わりあい日当たりのよい土手や半日陰の土の上」を好むとあるので、他の苔と比べると割合乾燥した場所を好むのかもしれない。

顕鏡寺 手水舎

顕鏡寺 手水舎

手水場とずっと呼び習わしてきたが、正確には寺や神社の入口にある手洗い場は手水舎と呼ぶらしい。恥ずかしい。そんなところにも苔が。近所の寺も苔感はあまりないのに、手水舎だけびっしりと苔や羊歯が生えている場所があり、苔の種類は問わずしてなんだかとてもうれしい。苔は殺菌作用もあるそうなので、決して汚いわけではない模様。それに石と竜だけではなんだかそらぞらしく感じる。ここに苔があるから、長い年月を感じられて美しい。

奇岩と苔

奇岩と苔

石老山の名前の由来である大きな岩。そこここに数メートル級の大きさで横たわっている。その上にも当然苔は生えるのだけど、ロッククライミングの技術がなければ無理な所行なので、指をくわえて諦める。地面とちがった苔が生えているのかよじ登って観察したい。

トカゲ

トカゲ

トカゲにも出会った。思ったよりのんびりしていて、わたしに捕まったりする。離してやると、死んだふりなのか捕まったことがショックなのか、しばらく硬直していたのが興味深い。茨城県に住んでいた頃はカナヘビをよく見かけて、そちらはしっぽが茶色い。しっぽが青いのはニホントカゲなので、別の種類らしい。

イボカタウロコゴケ

イボカタウロコゴケ

Twitterでご指摘いただいたイボカタウロコゴケ。規則正しく並ぶ側葉にぐっとくる。こういうのは本当に小さいので、標本を採取して腹葉などをきちんと顕微鏡でチェックするべきだと改めて決意。撮影に夢中になると採取することを完全に忘れてしまうので、「今日の採取対象」をあらかじめ1つか2つくらい決めておくべきかと思った。

オオトラノオゴケ

オオトラノオゴケ

リボンゴケ

リボンゴケ

奥多摩地域定番のオオトラノオゴケとリボンゴケ。どちらも和名が特徴的なので、初めて見た去年は感動したものだが、すっかり見慣れてしまった。とはいえ、都心ではどちらも絶対お目にかかれないので、おごらずにじっくり見ていきたい。

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画像を見返していたら見慣れない苔(?)が。なんだか茎がくっきり(……)しているので、苔じゃないのかもしれない。葉の形はホウオウゴケぽいけど、こんなにすかすかではないはず。行程の後半だったので集中力が切れてきちんと撮れていないのもいただけないので、石老山もやはり再訪しなければ。

コアカミゴケとホソバオキナゴケ

コアカミゴケとホソバオキナゴケ

常々ホソバオキナゴケは色素が薄くて地衣類に似ていると思っていたので、いっしょに撮影できたのがうれしい。表面のすべすべ感が蘚苔類と地衣類では決定的にちがう。そしてコアカミゴケの赤さを見かけると、なんだか当たりくじをひいたときのようなうれしさがある。

苔を見るようになって1年を過ぎて、もうちょっときちんと図鑑や顕微鏡で詳細に調べる時期がきたように思う。単に撮影してきれいというところから、もう一歩ステップアップしたい。簡易顕微鏡はもっているけど、やっぱりプレパラートをきちんと固定できる、児童用の顕微鏡からつきあい始めるべきだろうか。

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