苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

「タマゴケとの遭遇」苔観察日記 都内某所

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桜を筆頭に花が始まる春。苔もまた蒴を伸ばし、胞子を飛ばす準備を始める。もう少し暖かくなると、蒴の蓋が取れて中から胞子がこぼれだし、風に乗って雨水に流されて造卵器にたどり着いて受精する。動物とはちがって雄と雌が接触せず、親も子も認識することなく増えていく。生殖の距離感が動物にも適用されれば、縄張り争いや諍いがなくなるかもしれない。平和はたぶん自然のままに任せておいては訪れず、植物のように互いが直接的に関与しないようになることが求められるのかもしれない。もっとも、植物は植物で日当たりや水の場所を求めて静かに陣地争いをしているので、永劫の平和などというのは幻想でしかないのかも。

登山スポットとして最も有名な某所は、苔愛好家にとっても垂涎の的。小川が流れるルートは湿度が一定なのか、苔が大量に生え、一説によると100種類を超える苔が生えているとか。休日は観光客が駅からずっと続くのでゆっくり見る暇がないので、平日に時間をとって朝からじっくり観察した。駅から6号路までと、6号路に入ってから、さらに山頂以降でかなり植生が異なるところがおもしろい。

ウロコゴケ?

ウロコゴケ?

規則正しく縦に葉が並ぶツボミゴケの一種。苔類にカテゴライズされるイボカタウロコゴケと思しき苔は、茎から規則正しく葉が並ぶところがすごく好き。実際には小指の先ほどもない大きさだが、ギターの弦をかき鳴らすように葉を順番に触りたくなる。

ケチョウチンゴケ?

ケチョウチンゴケ?

首先がてろんと曲がり、いかにも重たそうな蒴をつけるチョウチンゴケ。図鑑などでは民家の近くでよく見られると書かれているが、わたしの近所ではまったく見かけないので、こうして蒴をつけてしなだれているところを見られたのが本当にうれしい。下から支えてあげたくなる感じは、ずっしりと実った稲穂の印象がある。

地衣類:ヒメレンゴケ?

地衣類:ヒメレンゴケ?

いつもの地衣類も穂先がわずかに赤みがかって、それまでとはちがうフェーズに入ったのかもしれない。苔やシダのようになめらかさがなく、菌類と藻類が少しずつ層をなして大きくなるところにぐっとくる。積み重ねる努力がみえる。

キゴケの仲間?

キゴケの仲間?

あまり見たことのない樹状型地衣類。小さな花がつくようにふわふわとしている。どれだけの選択が重なったらこんな形になるのかと考えてしまう。

シロキクラゲ?

シロキクラゲ?

茸は秋、というイメージがあったが、春から秋までがシーズンらしい。アミガサタケを見たかったが山中では発見できず、粘菌や写真のようなシロキクラゲと思しき不定形な菌類に出会った。

アブラゴケ?

アブラゴケ?

カビゴケやアブラゴケもいるという情報を耳にしていたのだが、自力では見つけられなかった。カビゴケは黴の匂いがするというが、あまりにも小さいので未だに目撃していない。黴の匂いをかぐことがうれしいわけではないのだが、それでも存在すると分かっていながら見つけられない己の不明さに少し落ち込む。

タマゴケ

タマゴケ

タマゴケ三連星

タマゴケ三連星

今回の目的はタマゴケを見ること。某所にて無事発見し、奥多摩で見たときよりも蒴の数が少ないと思ったが、きちんと目玉が赤くなっていて一安心。他の苔の蒴についている蓋は茶色やベージュだったりするのに、どうしてタマゴケだけ赤いのだろう。胞子が出た後も赤茶色に萎んでいくので、胞子自体の色が緑ではないのだろうか。図鑑や解説書でもタマゴケの外観は紹介されるが、タマゴケの胞子がどのようになっているか解体図のような絵は見たことがない。気になる。

他の山と比べると、それほど高くない地域にこれだけ多くの種類が混生していることに驚く。人がたくさん訪れることがかえって胞子を運ぶことに寄与しているのだろうか? ふつうだとシノブゴケやジャゴケあたりが優占種となって他の苔はほとんど見ないことが多いけれど、ここではいろいろな種がひしめきあっている。何度訪れても新しい発見がありそうな苔観察にとってもすばらしい場所だと思います。

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