苔観察日記 奥多摩

Bryophytes
苔の楽園

苔湯酒活動と名乗ってきたけど、別に湯にも入らないしメシも食わずに帰ってくることが多くなったので、ふつうに苔観察日記とタイトルを変更。今回は奥多摩駅からバスで10分、歩いて30分の栃寄沢を歩いてきた。ここを選んだ理由は、「奥多摩小川谷の蘚類の胞子体成熟時期について」を読んだこと。直前までは奥多摩湖周辺を歩こうと思っていたが、この論文で「栃寄沢にはタマゴケがある」と記されていることから、新しいタマゴケスポットを見つけようと試みた。

しかし今は1月。暖冬とはいえ、奥多摩は当然のように氷が張っている。普通の植物はクチクラに覆われているから葉自体が凍るというのはよほどでないとありえないと思うが、苔は外気と水分が直接に触れているから、苔自体も凍ってしまうというのが新しい発見だった。

凍った苔

凍った苔

奥多摩駅から奥多摩湖方面のバスに乗り、境橋下車(180円)。奥多摩駅側に戻りながら橋を渡り、わかりやすい登山口から進む。初めのうちは崖崩れ防止のため崖が金網に覆われており、その先に苔があるので見づらい。なので、ここは早めに通り過ぎ、金網がないところからしっかり見るのが良さそう。防砂ダムはちょっと冒険すると登ることができて、その先の湧き水に沿ってびっしりとホソホウオウゴケが生えている。この先でも同様に生えているので無理しなくてもいいのだが、他の苔よりずっと濃いビリジアングリーンが美しい。ホソホウオウゴケが生えている近くに、糸のような苔が生えていた。これからホソホウオウゴケになるのか、別の種なのかはわからない。

崖が金網に閉ざされている

崖が金網に閉ざされている

ホソホウオウゴケ

ホソホウオウゴケ

謎の糸状苔

謎の糸状苔

奥多摩駅前は日が照って暖かかったが、栃寄沢はほとんど日陰のため気温がぐっと下がる。9時を過ぎても凍っている苔があり、ダウンジャケットを着てこなかったことを心から悔いた。ある程度同じような苔であろうと思われる場所は小走りで通り過ぎ、自分の熱で寒さをしのぐ。

苔にも氷

苔にも氷

道路沿いにはリボンゴケ、ムチゴケ、ホウオウゴケ、トラノオゴケ、ネズミノオゴケ、アオギヌゴケ、ハイゴケなどの仲間が見られる。苔類はあまりない。山によって苔類が極端に少ないことがあり、これは石灰岩が多いとそうなるのだろうか、と想像しながら歩く。

ホソバゴケ?→Brachytecium buchananii(ハイヒモゴケ)とのご指摘。ありがとうございます!

ホソバゴケ?→Brachytecium buchananii(ハイヒモゴケ)とのご指摘。ありがとうございます!

この時期は蒴が出ているものも多い。よく蒴柄が絡まっていることがあるが、風で揺られて絡まってしまうものなのだろうか? それとも蒴柄自体に人間には分からない程度の粘り気があって、ほんの少しの接触でもくっついてしまって絡まるとか? かなり離れた場所の蒴柄が絡まっていることがあり、偶然にこんなことが起こるのだろうかといつも不思議に思う。

カラマリユニオン

カラマリユニオン

カラマリユニオン

カラマリユニオン

奥多摩は地衣類が豊富なのもうれしい。うねうねしたモジゴケやぽつぽつしたヘリトリゴケは爆発的に増えそうな不穏さが苦手なのだが、樹状型はゾンビぽい色やまっすぐな指向性が好き。縁に睫毛のような毛が生えているマツゲゴケはわかりやすい。

マツゲゴケ

マツゲゴケ

初めて見たフトスズゴケ。そしてコウヤノマンネングサ! 以前奥多摩湖周辺で見たことがあったが、こちらはしっかりと集落を作っていて、立派に成長していた。大物が見つかるとうれしいものです。

フトスズゴケ→Schistidium strictum or liliputanum(ホソバギボウシゴケまたはコメバギボウシゴケ)とコメントいただきました。ありがとうございます!

フトスズゴケ→Schistidium strictum or liliputanum(ホソバギボウシゴケまたはコメバギボウシゴケ)とコメントいただきました。ありがとうございます!

コウヤノマンネングサ

コウヤノマンネングサ

目指していたタマゴケは見つからなかったものの、望外にコウヤノマンネングサに出会えたことで今回の目的は達成。また次回、今回登ったところから新たに観察を続けていって、最後には御前山の頂上まで登れたらおもしろそう。何回通うことになるのかは今のところは考えずにおく……。

コメント