苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

Bryophytes

苔観察日記 武蔵五日市駅〜広徳寺〜金剛の滝

投稿日:2015年11月1日 更新日:


苔湯酒活動とは、山に登って苔を見て、下山したら風呂に浸かり酒を飲む活動のことである。今回は、苔の研究をされている上野先生が主催されている「苔をみる旅」に同行させてもらった。JR五日市線に集合し、夕方まで歩いて広徳寺・金剛の滝をめぐりながら苔を見るというもの。ルートを確認しようと、iPhoneアプリ「山と高原地図」を見るが、ルートの記載がない。だいじょうぶかな……。

今回の目的は、やはり苔の正しい名前を教えてもらうこと。もちろん顕微鏡がないと特定できない種類も多いが、プロはどのくらいの種をルーペだけで同定できるのかを見せていただき、その知識のご相伴にあずかろうというわけ。記憶するためには自分の脳みそももちろんだが、たくさんの種類があるのでメモを取らないと難しい。しかし、メモと写真を結びつけることも難しく、順番に頼るしかない。そこでiPhoneとカメラを組み合わせることで撮影した写真が何の苔なのかを推定しやすくする方法を考えた。

  1. 苔の名前を教わる
  2. 苔を撮影する
  3. 苔の名前をiPhoneアプリ「Fastever」に記録する。このとき、時刻を表示するボタンを押すと、日時が秒単位まで記録される
  4. 帰宅してから写真の時間とFasteverに記録した時間を比較して、苔の名前を確認し、写真のメモに記録しておく

というパターンを4月の勉強会で編み出したのだが、今回はデジタルカメラ「TG-3」を買って初めての勉強会だったので、意外な盲点があった。TG-3の方は秒単位まで画像に記録していないのだ……。まあ、秒単位でメモしたり撮影しているわけではないので、きっと問題ないだろう。

さらに罠があって、MacのFinder検索ではPhotosのKeywordは検索範囲に含まれていないのだった! 写真を検索したい場合はわざわざPhotosの検索窓からキーワードを入力しなければいけないとか。うーん、やっぱりPhotosは今ひとつふたつ、使い勝手が悪い。本当は画像を表示できるDBを作ればいいのだが、導入するのも一手間だし、運用もそこまで手をかけられるかはなはだ疑問ではある。

さて、今回の参加者は先生をいれて6名。普段は半分くらいの人数だそう。早速、広徳寺に向けて出発する。途中ハマキゴケを削って落書きしている壁などをへて、お昼過ぎに広徳寺へ。苔を見る者の歩みは遅い。広徳寺までの道のりでは、

  • リュウキュウミノゴケ
  • ケギボウシゴケ
  • イチイゴケ
  • カマサワゴケ
  • オオトラノオゴケ
  • ホンモンジゴケ
  • ハイゴケ(広徳寺の屋根にへばりついていて、たまに落ちてくるらしい)

などの存在を教えていただく。リュウキュウミノゴケは名前にリュウキュウと付くため、関東近辺には存在しないと思い込んでいたので、この辺にもいるんだ! という驚き。そこはかとなくリュウキュウぽい肉感がいい。

そして長年苔だと思い込んできた植物体が実はシダだったことも判明した。クラマゴケ(という名前のシダ)。苔にしてはやけに植物体としてはやけにくっきりしていると思っていた。

クラマゴケ(右、池上本門寺撮影)

クラマゴケ(右、池上本門寺撮影)

昼食の後で、広徳寺裏側に回り、気になっていった苔「ヌリバシゴケ(仮)」を見る。ヌリバシゴケ。漆のあの塗り箸ですよね、語源はきっと。どんな苔なのかと期待していると、見た目は大きめのホウオウゴケ。偉大な先人を捕まえて言うのもおこがましいという自覚はあるが、苔界の和名の付け方は後生のわたしたちから見るとあまりにも理解しがたいというか、語源の根拠を伝えるべきではなかったかと思わされる事例がまた一つ増えた。

ヌリバシゴケ(仮)

ヌリバシゴケ(仮)

ウキゴケ。小さい粒は無性芽?

ウキゴケ。小さい粒は無性芽?

金剛の滝へはちょっとした坂道を越えることになる。途中くずれかけた木の階段などもあるので、あわてずにゆっくりと。先に書いたようにアプリではルートが表示されないが、山道は明瞭で、行き先の看板もわかりやすいので道に迷うことはない。滝周辺では、

  • ツルチョウチンゴケ
  • チャボヒラゴケ
  • クラマゴケモドキ
  • トサカホウオウゴケ

など。

クラマゴケモドキ

クラマゴケモドキ

トサカホウオウゴケ

トサカホウオウゴケ

滝から戻りすがら、ふと別の道を歩いていたら大きな苔が。すわコウヤノマンネングサ! と小躍りしようとしたら参加者から冷静に「クジャクゴケ」との指摘を受け、小躍りすべく振り上げた両手をぼんやりと下ろした。とはいえ、クジャクゴケとは初めての邂逅で、多くの参加者もあまり見たことがないとのこと。本当にわずかな個体だけがひっそりと生息していたことにいじましさと喜びを感じる。写真はまったくダメだったが。

暖かいお茶とお茶菓子をいただき、駅へ戻ると17時。参加者の方はそれぞれに自然に造詣が深く、一人一人のお話を聞いているだけでも勉強になり楽しかった。またおもしろそうなスポットに行くときは同行させてもらおうかと画策している。

解散後、拝島駅で途中下車し、長年行きたかった石川酒造経営の「雑蔵」へ。正直にいうと、石川酒造の日本酒はちょっと辛めなところが苦手で、目的はビール。ピルスナー・ペールエールと、今年新しくできたというIPA「The Tokyo Blues」をいただく。IPAにしては香りは控えめで、後味のキレがドライで渋みさえ感じる勢い。だが、うまい。ハードボイルドなうまさだ。茹でピーナッツや茄子の揚げ浸し、しっかりした大山鶏などをいただく。隣にある「福生のビール小屋」では福生ハムの生ハムやソーセージを出しているのに、雑蔵では出していないのが意外だった。ビールに合うので、こちらでもあればいいのに。どちらの店も共通していえるのは、しっかりした食材とシンプルな味。うまいなー。

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