第42回読書部 カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』

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読書部は隔月で「1人ではなんとなく読む気にならないけど、他人の意見は気になる」本について集まってお話する会です。今回の課題図書はカズオ・イシグロ『忘れられた巨人』。実は数年前に前作『わたしを離さないで』でも取り上げたことがあり、その際には世界観について意見が分かれ、作品としてはともかく読書会としてはおもしろかった。今回の参加者は男女比ほぼ半々で、13名。途中休憩を入れながら4時間話しているので、下記はほんの抜粋です。

いつもの通り、会の間は話すことと聞くことに専念しているので、参加者の読後の印象が中心です。
そしてネタバレは一切気にしていませんので、未読の方はご注意ください。

  • 会話がかみ合わないせいか、眠くなる。特に船頭との最後の対話が急に途切れる感じが気になった。
  • 会話に隠蔽されたフラグがたくさんあったのに、最後回収しきれなくて拍子抜け
  • 修道院での活劇が楽しい
  • ファンタジーの形式をとったことで物語の緻密さが追求されていない。
  • ラストはお互いのわだかまりが解放されたという投げかけ
  • おもしろいけど熱量が足りない
  • 島に渡る場面で記憶が試されるシーン、愛に記憶は必要なのか?
  • 民族対立という現実に物語が落とし込まれるのが気になる
  • 「こうだと思ったらちがった」という記憶に関するトリックが特徴的
  • 後出しじゃんけんぽい。叙述ミステリみたい
  • ガウェイン卿(本家は12時間だけ力を発揮できるという設定)などブリテン血糖値が上がるポイントがたくさん
  • 作者が聞かせたいのは自分の楽器の音色で、ジャンル音楽ではない。ル=グウィン先生が怒ろうとジャンル小説を書きたいわけではない
  • 読者が善の側にいられることが心地よさの秘密。ラストで悪の立場である船頭を出す
  • 結局のところ、巨人とは何だったのか?
  • 文字を持たないケルト人と文字のある文化のサクソン人。霧が晴れて争いが起こることで、文字のある世界に変わっていき、記憶が鮮明な世界への変化を予感させる
  • 霧はブリテン血糖値を上げる
  • イアン・マキューアンと同系列の文学てへぺろ
  • 民族全体の記憶や意思が作り出されることが「巨人」
  • ガウェイン卿にせもの説(馬や剣の名前が実際の伝説と異なる)

結末については「合格」「不合格」という観点ではなく、島自体が死者の集う場所なので、舟で渡るということは死を意味する。そのため、2人で一緒に渡ることはできず、1人ずつ渡ることになる。これは前作でも同様で、実際の救いはありえない。

霧によって記憶をなくしているアクセルは、ベアトリスの名前を思い出すことができない。作中で彼女を名前で呼んだことは一度もない。そのため「お姫様」と呼んでいるのではないか。

ウィスタンは竜クエリグを倒すが、エドウィン少年につけられた竜の傷はクエリグ自身がつけたものではない。とすると、他にも竜がいて集団テレパシーのような概念で、少年をクエリグの元まで連れて行くことができたのか?

などなど、読み方がいくつもあって、普段よりも活発な意見の交換ができたように思います。著者や訳者の講演会に行った方の話も豊作でした。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

次回読書会は9月26日(土)を予定しています。課題図書は7月中に決定します。

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