苔をたずねて三千里

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第40回読書部活動 ミハル・アイヴァス『黄金時代』

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ピンチョン『重力の虹』読書会からわずか1カ月後、たしかに一人では読むのが大変な海外文学を課題図書にはしているが、軽い気持ちで選んだミハル・アイヴァス『黄金時代』に意外な苦戦を強いられていた。前作『もうひとつの街』は周囲の読んだ人はみな好評だったので、まちがいはあるまいと思っていたが、想定していたよりもずっと読みにくい。こ、これは以前通った『ロクス・ソルス』と同じ文学の香り……。わたしは『重力の虹』と同じように、「どこかに籠もらないと読めない」という危惧の元、初台のfuzkueさんにこもって、なんとか1週間で読み切ることができたのだった。

こんなに読みづらい本、そんなにたくさん参加したい人がいるわけないという悲観的な予想は外れ、満員の15名(1人病欠)の申し込み。本当にいつもありがとうございます! もっともどんな本でも再読すると新しい読み方が見えてきたりするわけで、二度目の読みではこのあたりで初読時にひっかかったが、これはこういうことだった、と見えていない関連性が見えたりもしました。

本会になってしまうとメモする余裕も記憶もないので、いつもの通り参加者の印象をご紹介させていただきます。そして当然のようにネタバレありますのでご注意ください。

  • 余韻だとはわかっているが「本」の続きが読みたい
  • まとまっていないという印象でおもしろいかどうかもわからない。もしかすると作中の「本」のように、この『黄金時代』もそれぞれ中身がちがうのではないか
  • 読者がそれぞれ拾ってしまう細部はいいが、ジェフ・ヴァンダミアが選んだ『もうひとつの街』に比べると長すぎ
  • ダイオウイカが出てくる場面のディレクターズカットは魅力的
  • 火の代わりに水が使われているプラトン洞窟の比喩など、哲学ネタが多くておもしろい。言葉にこだわることで、言葉がなかったら認識することさえできないという存在論的な視点
  • 文字の上のアクションがヒッチコック「海外特派員」みたいだが、本作での意味の変化までは読み取れなかった
  • 著者が読んだ小説が素材になっていて、元ネタが見えるところがいやな人も。それが作中で語りかける作者という自意識にも反映されている
  • これだけ特徴的な島は一般的に研究されそうなのに、外の世界で触れられていないのはなぜか
  • 書いている間に物語に入り込んでしまうところが好き
  • 無意味なものが書けない、作為が透けてしまう。この手の話は『アラビアの夜の種族』、そして『石蹴り遊び』という先達がいる
  • 島の描写では価値観を相対化させようとしているのに、理屈が勝ちすぎて失敗している。33匹の蟹や烏賊と彫像の魚、匂いの時計など細かい部分がいい
  • 生活感(リアリティ)がないので、物語が長くなると嘘くさくなってしまう

その後の話では、作者が元々社会的に不適応で、禅や哲学などを通じて、現在の執筆スタイルになったなど、直前にあった訳者の講演会の話が聞けたのはよかった。個人的にはミハル・アイヴァスを知れば知るほどレーモン・ルーセルに近い印象を受ける。

他にはアンドレ・ブルトンから始まる自動筆記的な文章、島はプラハの隠喩ではないか(だとしたら語り手はプラハから一歩も出ていないことに!)とか、日本は幻想文学・アメリカではSF・チェコでは哲学小説と異なる受容のされ方をしているとか、物語が増殖してまとめきれないさまがカフカだよね、とか。ミハル・アイヴァスは短篇や中編くらいなら読みやすい奇想だが、これほど長くなると破綻してしまうよねというのが、なんだかコルタサルぽいと思ったことです。

次回開催は5月24日(日)、課題図書は去年に引き続き実は三度目のジーン・ウルフ『ジーン・ウルフの記念日の本(仮)』です! 現時点で残り枠2名です。よろしくお願いします。

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