苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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「岡田美術館所蔵 琳派名品展 〜知られざる名作初公開〜」

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去年は美術館にほとんど行かずじまいだったので、今年はしっかり見たい展覧会を見ようと決意。結果として1ヶ月で3カ所も行ってしまった。リバウンドのようだ。

岡田美術館の名前を知ったのは、岩佐又兵衛の新発見があったというテレビ番組を見たことから。開館一周年の記念展示が行われるそうなので、知らなかったのも仕方ない。そして同時にものすごい額の入館料をとることでも記憶に残った。3000円近い入館料の美術館収蔵品が800円で見られるなら逃すわけにはいかないと思い、日本橋三越で開催されている「岡田美術館所蔵 琳派名品展 〜知られざる名作初公開〜」に行ってきた。

平日昼だから空いているだろうとたかをくくっていたら、とんでもない混雑ぶり。週末は開店と同時に入るくらいでないと、相当なことになるのではないか。その混雑ぶりは当然というほどの名品ばかりが並ぶ。確かにこれだけすばらしい作品が続くのであれば、2800円の入館料にも納得。

展示の詳細はArt & Bell by Toraさんのところがいつものようにわかりやすくまとまっている。中でもわたしが注目したのをいくつか。

俵屋宗達《明石図》

罪が晴れて都に帰る源氏一行を屋根から見下ろす。一方で上空の月も描かれている。見下ろす視点ならば本来は月は視野に入らないので、二カ所からの視点が一枚の絵に同居しているところがおもしろい。

尾形乾山《夕顔・楓図》

乾山は形の認識をぎりぎりまで攻めてくる。楓の葉は本来なら葉先が鋭角のはずなのに、太い星形のように膨らんでいる。確かに葉の一枚だけを見れば鋭い葉先も、たくさんの葉が重なったり風で揺れたりすればこうやって膨らんで見えるように描かれてもおかしくない。この絵を見た後では自分の中の「紅葉」の記号が書き換えられてしまう。海の向こうでは写実をやっていた時期に、すでに自然をアイコンとして抽象化してしまう琳派すごいと改めて驚いた一枚。

酒井抱一《月に秋草図屏風》

すすきの穂の黒さにまず目がいく。中空に浮かぶ噴水のような造形から茎を見ていくと、黄土色の直線の下では同じ色の半円が無数に描かれて、まるですすきの波のよう。ざわめいている地上から上を見上げると半円の黒くなってしまった銀月。柔らかい線なのにくっきりした構図。

鈴木守一《富士図屏風》

この絵一枚見に行くだけでも行くべき、その1。もうすでに琳派の枠を超えて前衛に至っている。それでいて見ていてすがすがしいデザイン。ふつう描かれる富士山の青と白を逆転させているので、山腹に雪が残っているのに山頂で山肌(しかも冬の空のような青)が見えているのがすごい。且つ富士の麓では琳派しちゃっている。

鈴木其一《名月に秋草図》

この絵一枚(実際には3枚)見に行くだけでも行くべき、その2。江戸琳派特有のステキな群青の滲む月を中心にどんとそなえて、両幅に秋草の絵を配置する。江戸琳派にははかなさがある。落款の場所も左・中央・右と変えてあるのがおしゃれ。

加山又造《初月屏風》

この絵一枚見に行くだけでも行くべき、その3。まがまがしいことこの上ないのに、いつまでも見ていたくなる絵。風の流れがすべて線で描かれていて、左遠方にサイケデリックな山、中央右に切り裂かれた跡のような三日月。錯乱した夢のような一枚。写真より現物はもっと黒々としていて、圧巻。

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