2014年12月の読書

book
12月の読書

12月なので冬の本が多いし、ロシア方面に偏りはじめた。
※画像と本文は関係ありません

2014年12月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1940ページ
ナイス数:119ナイス

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)感想
理路整然とした幻想譚という矛盾した小説の極地。悪魔が来たりて笛を吹くと、編集長の首が飛び、欲に塗れたご婦人方の服が消える。巨匠とマルガリータ2人の純愛のBGMは、4ピースの悪魔バンド。モスクワを黒魔術の熱狂に放り込む。この狂奏的な物語はヨシュアとピラトゥスの2人にまで遡り、すべては炎によって解放される。巨匠とイワンの別れにはついほろりときてしまったよ。来年1/18の読書会が楽しみ! ベゲベゲ!
読了日:12月29日 著者:ミハイル・A・ブルガーコフ


酔いどれロシア―戯画詩集 (同時代ライブラリー)酔いどれロシア―戯画詩集 (同時代ライブラリー)感想
素晴らしい名言、素晴らしい酔いどれたち、どこをとってもダメ人間。だが、ダメ人間こそが人間だ。きりりと引き締まった文体で、ズボンを売り、テーブルの下で、背中でウォッカを受け取るロシア人がいかに酒を愛するかを描く。ソ連という鉄面皮の下にはこんなにポンコツなおっさんが生きながらえた、それだけで人類の可能性を感じられる。「へべれけの友たちよ!酔いどれたちよ!人類の夜明けを反吐で迎えよう!」『アラブ飲酒詩選』『ロシア亡命料理』『世界の涯まで犬たちと』などと共に並べたい、このダメ感。美しい。
読了日:12月21日 著者:アレクサンドルジノビエフ


私の前にある鍋とお釜と燃える火と―石垣りん詩集私の前にある鍋とお釜と燃える火と―石垣りん詩集感想
60年前の銀行員の言葉は今でも刃物のように鋭く、うずたかく詰まれたわらのように暖かで、北風のように厳しく、南風のようにやさしい。俳句ではそれまで詠まれた句の全てを前提として詠まなければいけないと聞いたが、わたしたちも石垣りんの言葉を踏まえて学び働き生きるべき。
読了日:12月16日 著者:石垣りん


創造者 (岩波文庫)創造者 (岩波文庫)感想
なよなよボルヘス。基本的に解説を先に読むことは勧めないが、本書に限っては「ボルヘス」という作者に纏わる博識・幻想・現実からの超克のようなイメージを吹き飛ばして、まったく1人のアルゼンチン人作家のことばを読む、というスタンスが望ましい。ちょっとペソアにも近いかも。「ロマンチックな古典主義者」という鼓先生の評はもちろん、そこに私小説の趣すら感じられる本書からは、難解だけではない、1人の人間としてのボルヘスの弱さが感じられた。ツンデレともいう。
読了日:12月14日 著者:J.L.ボルヘス


冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)感想
ケルトの血を重視して、物語というよりは記録文学に近い切迫感。作者が見聞きしたであろう現実を語り直すというか、それゆえに笑いの入る余白がなく、ひたすら拳を打ち合わせるようなタフさがずしりと残る。登場人物の「執着」や「不器用さ」は今でもインターネットを執拗に使わないわたしの母や、スマートフォンに切り替えないガラケー信者、スマートフォンにしてもLINEは絶対使わないと主張する人など、どんなレイヤーでも存在しうる。動物の生臭さや湿った空気の匂いなど、気品というよりは粗野ゆえの純粋さが印象的。
読了日:12月13日 著者:アリステア・マクラウド


長谷川四郎 鶴/シベリア物語 (大人の本棚)長谷川四郎 鶴/シベリア物語 (大人の本棚)感想
文庫版なので「鶴」は未読。シベリアでは寒く原始的な重労働ばかりで、いまこの時期こそ読むべき。戦争に負けるとこうなるのを、改憲論者の方々は一度お目通しください。白眉は、威張り散らしていた佐藤少将がズルをして降格させられ労働しなければいけない身分に落ちる様。冷静な作者の視点は、佐藤少将の細かなインチキもソ連人の冷徹さも平等に描き出す。ソ連人も捕虜にすることが前提ではないので、全てがやっつけで、それゆえに残酷な結果も導きやすくなる。自身の体験も客観的・冷静な視線で描き出し、しんみりする中にも笑いがある。
読了日:12月7日 著者:


無声映画のシーン無声映画のシーン感想
わたしも村と名前がつかないような寒村で生まれ育ったので、ぐっと実感を感じながら読んだ。読むにつれ、年を経た人ほど本書から引き出される記憶の束が分厚くなるはず、と。ただ決定的にわたしの故郷と異なるのは、死の近さ。公害でこれほどの人が障害を受け死に至っているにも関わらず、淡々とあくまで写真の外からの視点を崩さない。読者は写真を手がかりにリスボンの狂った時計の世界にそっと忍び込む。輝いていた世界の記憶は今もわたしたちの中で光を放ち、本書の記憶もまた、わたしたちの心に鈍く輝く。
読了日:12月2日 著者:フリオ・リャマサーレス

読書メーター

コメント