苔をたずねて三千里

苔の写真を撮り、海外文学を読んでいます。

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20年来の夢がかなったホイッスラー展で「ソレント」を発見

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Nocturne: Blue and Gold - Old Battersea Bridge (1872)

学生時代は美術の心得がまったくなかったにもかかわらず、20代前半にラファエル前派という存在を知ってホイッスラーはもとより、ウィリアム・モリスやロセッティ、ミレイなどの画集に熱狂したのは、まちがいなく少女漫画の影響だ。大島弓子や内田善美はラファエル前派の薫陶を受けていると先輩に教わり、元ネタを知りたいと思って近づいたのがきっかけ。想像以上に絵柄や印象が近いことに驚いた。近年はラファエル前派の作品が日本で公開されることも多くなったが、ホイッスラーについては長年まとまった公開はなかったはず(正確にはホイッスラーはラファエル前派とはみなされないようだが)。

Arrangement No.2

某漫画に取り上げられていてずっと見たかったのが、白のシンフォニー。残念ながら今回はNo.1は公開されておらず、No.2とNo.3が隣り合わせに掲示されている(某まんがで「鰻屋さんが持つようなごついうちわ」と評されていたのが忘れられない)。ホイッスラーは特に白のアクセントが美しい。決して暗いキャンバスに白を置くだけではなく、白い光と周囲の調和がしっかりしている。白のシンフォニー以外でも、「ブルターニュの海岸(ひとり潮汐に)」の波しぶきなどはレンブラントの光線のように、明るい青空とごつごつした岩肌の中で輝きを放つ。

Symphony in White, No. 2: The Little White Girl

Coast of Brittany

印象派というわけでもなく、ラファエル前派にも入れてもらえないホイッスラーって、実は●●派的なカテゴライズがしづらいのかもしれない。強いて言えばジャポニズム直球派か。とにかく和物・中華物が大好きで、会場にも家紋の図案集や浮世絵がこの手の展覧会には異例なほど展示されており、どれも大英博物館から来ているので日本国内でもなかなか見られないものばかり。日本からの影響がどう反映されているのかを見るのも楽しくて、ホイッスラーの場合は結構はっきりと模倣している。模倣していてもホイッスラーの場合はリアリズムへの傾倒が強かったのと、油彩・水彩のぼかしを使うことで、浮世絵の構図を用いながらどう見ても西洋絵画という特異な地点にいる。白・青・紺という落ち着いた色調によって、浮世絵のアッパーな感じからかけ離れることができていて、ホイッスラーにしか描けないロマンがあると思うのです。

ソレント

この「ソレント」という変哲のない海の絵、実際に会場で見ると柔らかい緑色、凪いだ海の静けさが染みこんできました。海で育ったわけでもないのに、故郷のような懐かしさを感じるのです。この絵の存在はまったく知らなかったのですが、デジタルでは伝わらない素晴らしさなので、ぜひ横浜みなとみらいまで足をお運びください。

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