ガルシア=マルケスが亡くなった


ガルシア=マルケスが亡くなった。
御年87。
先々週あたりに入院したものの本人の希望で退院した、とあったから「なんだまだピンピンしてるじゃん」と思った矢先の訃報に余計驚いた。

最初にガルシア=マルケスを知ったのはSFと出会って数年たった20代後半になる頃。
当時SFの人たちに囲まれてDASACONスタッフをやっていたが、SFやファンタジーの土俵では知識量で勝ち目がないとすぐに分かった。
SFも好き、ファンタジーはもっと好き。
でも、そこにない何かをずっと探していた時に出会ったのが『百年の孤独』だ。
ラテンアメリカ文学を読んでいる人はいたけど、ラテンアメリカ文学が好きと主張する人はあまりいなかった。
もちろん外国語を学ぶ大学にはいくらでもいるだろうけど、趣味でラテンアメリカ文学を読む、というのはちょっとおもしろそうだと思ったのがきっかけ。
そしてもちろんその扉を開いたのはガルシア=マルケスだった。

最初に読んだのは当然『百年の孤独』で、まだ水色の表紙版しかなかった。
一番記憶しているのが、息子が死んで路地を血が流れ続け、最後には家にたどり着いて「あらぁ、大変!」とウルスラが気づくところだ。
そんなのありか。でもありだ。
『百年の孤独』はいろんな縛りを一気に解き放って、世界や小説にはあらゆる可能性があることを教えてくれた。
そしてあらゆる可能性が風の一吹きで消え去ってしまうことも。

一番好きなのはむちゃくちゃな族長が大暴れする『族長の秋』。
人に勧めるなら美しい構造の『予告された殺人の記録』。
短篇集はJ・G・バラードにもちょっと近いところがあって、地元の鬱陶しさと温かさを思い起こさせてくれて、灼熱の太陽に照らされた中米・南米の見たことのない景色を届けてくれた。

バルガス=リョサに殴られたこともあったろうし、カストロと仲良くしたことで弾圧を受けたラテンアメリカ文学者の多くから右翼的だと批判されたこともあったという。
それでも彼の小説は間違いなく読む価値があるし、文学は北半球だけのものではないということを決定づけたとも思う。
カルペンティエールがヨーロッパから持ち帰った「マジック・リアリズム」という言葉を定着させた。
そして、マジック・リアリズムという地元文化を小説にするのがありだ、と世界中に知らしめて多くのフォロワーも生み出した。
新聞記者の観察力とおばあちゃんの想像力。
浅はかな私見でありますが、シュールレアリスムによって難解な前衛に傾いていた小説の世界は彼の影響でバランスを取ったように思う。
単純に読んでおもしろい。
文学史を知らなくてもおもしろい。
それがガルシア=マルケスが築いた最大の功績だと思う。

近年は翻訳も数が進んですっかり追い付いていないけど、まだ未読のガルシア=マルケスの小説があると思うとこの先生きていくのが楽しみです。
そしてありがとうガボ。

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