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日本映画 アーカイブ

2006年06月10日

誰も知らない

誰も知らない
誰も知らない
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バンダイビジュアル (2005/03/11)
売り上げランキング: 5,674

最近の邦画にはとんとうといのだけど、海外で賞を取ったりして評判になったのは知っている一作。これを無条件にほめるにはあまりにもずっしりとのしかかられて、「おもしろい」という評価は簡単にはできない。すごく興味深く、忘れられない作品なのはまちがいないんだけど。

あらすじは長男と母の母子家庭と思われる二人が引っ越すところから始まり、荷物のスーツケースなどにはほかの兄弟3人が隠れている。その後も二人だけの母子家庭を装いつつ、5人での生活が始まるが、やがて母親は外の男と遊ぶのが楽しくなったりして家庭を顧みなくなり、ついには帰ってこなくなってしまう。

イアン・マキューアンの『セメント・ガーデン』も同じように親を失った兄弟たちが好き勝手に生きていく話だけど、あちらはけっこう残虐なシーンもあったりして肉食動物なアンファン・テリブル。日本の作品は農耕民族の血が出ているのか、兄弟は植物を地道に育てたりする。やりたい放題というシーンはあまりなく、淡々と日々をこなしていく姿がいちいち思い出される。金を借りに行って雨に降られるところ、バケツで水を汲む姿、一家そろって布団を並べて寝るところ。それらの生活ぶりは長男が発する台詞にすっとつながっていく。「いっしょに暮らせなくなるから」。

終盤、子供たちの顔つきが変わっていくシーンは、彼らの心の移り変わりが表情にくっきり現れてぐっときます。そして羽田。わたしが自転車で羽田に行き、職務質問受けて45分も拘束されたときは、あっという間に警官が現れて派出所に連れて行かれたので、実際にはあんなスーツケース押して歩いていたらばっちり見つかっちゃうよな、と心とここでつぶやきました。でも、上を向いて飛行機の腹を眺めていると、異星の動物園にまぎれこんだらこんなにでっかい鳥が飛んでいるかもしれない、と思うほどに不思議でうるさくて妙に集中しちゃうところは映画を見ていてとても共感できました。

子供嫌いを自他ともに認める(最近は年のせいか弱まってきましたが)わたしでも全編息をこらして見てしまう。映画というよりもこの異常事態を覗いているような感覚もあり、一方では大人になった今でも映画の中の子供たちのように常に不安を抱えながらもその日その日を暮らしていかなければならない共感も覚えました。誰彼かまわずすすめられる映画じゃないけど、映画を見て内省できる人にはおすすめ。

2006年06月11日

花とアリス

花とアリス 特別版
花とアリス 特別版
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アミューズソフトエンタテインメント (2004/10/08)
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岩井俊二監督作品は、「スワロウテイル」はおもしろかったけど、「四月物語」は恥ずかしくて見ていられなかった。ほんわかした日常は文章やまんがで読む分には全くおもしろくこちらまでほんわかしてくるのだけど、いざ映像で見せられると恥ずかしくなってしまうのは、単にわたしが自意識過剰で客観性を保てなくなるためだと思う。ほんわか空間はかなり主観の作り込みが必要ですから。

冒頭、男の子を追いかける花とアリスのシーンで、さびれた住宅地がホームから見えるのだが、あの舞台は水戸線にちがいない。あのしょぼい線路橋とか、電車の車体色はとても見覚えがあるよ。無人駅で乗降客が少ないところをねらってデートに使っていたというのは内緒ね。 ちなみに「花とアリス」のロケ地特集」というページがあり、レストランのシーンで背景に古本屋が映って「おっ、ここ行こう」なんて思ってしまったことも内緒にしてください。もう古本は買わないってば。

主人公格の鈴木杏がびっくりするほど不細工で、もしわたしが事務所の人間なら怒って抗議に行くほどの映りだった。バレエシーンも足あがってないし、全体に嘘で固めたテンプルみたいで、それはそれで若さの発露なんだけど、やっぱり自分のために大きな嘘をつく人って好きになれない。もっと寛容さを身につけたいです。

おいしいところどりの蒼井優は天然美人を素で演じてる。きちんとバレエの動きとツラで、岩井さんはこの人を撮りたいんだろうなと思いましたよこのロリコンめ。 最後のバレエシーンはわたしに踊りのセンスがないこともあり、それほど感動はできませんでした。逆に鈴木杏の方にそういうシーンがないので岩井監督の女の趣味が見えるようです。

先輩キャラはなんともぼんくらで、大学入ったらモテない成分を増幅しそうで今から心配です。あんなカワイ子ちゃんに囲まれた経験値を生かしていただきたい。

青春カムバックアゲインな人とか、「恋とはどんなものかしら」といってるおぼこさんは見ておくとよいでしょう、って最初は考えていた。でも、よく考えたら甘酸っぱさから遠くなってしまった人ほど、この映画でフレッシュネスを取り戻すという手もありです。ただ、わたしは苦手。このフレッシュネスがまぶしい歳になってしまいました。

2006年06月22日

鬼が来た!

鬼が来た!
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ジェネオン エンタテインメント (2002/11/22)
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カテゴリは「日本映画」ですが、確か日中合作のはずです。

中国のひっそりした村に日本兵と通訳が麻袋に入れられて放り込まれる。放り込んだ人物の正体は分からない。日本兵を殺したら村ごと殺されるかもしれないし、解放したら放り込んだ何者かに復讐されるかもしれない。仕方なしに倉庫に放り込んで面倒をみることになる。

2000年公開の映画なのに、第二次大戦の映画で全編白黒で始まったので、予期せぬ暴力シーンがあったらイヤだなあと思っていたら、いきなり鉄砲をつきつけられるシーンがあり、見ているほうが「乱暴しないで」となよなよした気持ちになってしまいました。R15ぽい映画だったらやだなあとあえて画面には集中せず、書類を書きながらちらちら見始めたのです。しかしそれは杞憂でありました。

村の長老を中心に日本兵の簡易お裁きのシーンが何度かあるのですが、被告人がちみっとした椅子に腰掛けているのがなんともみじめな感じです。日本人はお白州に出るとむしろの上で正座するわけですが、あれは悪いことをした、しないと主張する意思が姿勢から感じられます。しかし、ちみっとした椅子に腰掛けて背中を丸めて上から見下ろされる姿は、「立場ねーっす」という卑屈さにあふれて、いかにもせこい悪事をはたらきそう。

つかまってる日本兵と世話する夫婦が中心だけど、それぞれの村人や日本軍の上官殿たちの個性が際立っています。全体としても村人のこそこそした卑小さ、日本軍の荒々しさ、そんな対立がラスト間近の宴会で一つになる。酒ってすばらしい。全編を通して意外な展開が続き皮肉を含んだ笑いを誘います。まるで恐ろしい鬼もどこか悲しげな感じを持っているとでも言うかのようです。

2006年07月23日

ハウルの動く城

ハウルの動く城
ハウルの動く城
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ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント (2005/11/16)
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先々週に本作を借りて3日後くらいに「『ハウルの動く城』テレビ初登場」の文字を読んだ時は、髪の毛を洗った後に顔を洗おうとしてなぜかまたシャンプーを手に取ってしまったときに覚える感情と同じでした。値段はちがうけど。どちらにしろ、ぼこぼこどかどか動く城のようなものが見られただけで満足です。あれは確かに大きな劇場ででっかい音で見たほうが楽しいだろうな。

ちょっとイケメンとデートしただけで嫉妬にあってしまうソフィーは三輪お局様から新参者にありがちな報いを受けるわけですが、そこからの行動力は生き生きしていて、現実にはありえない丈夫さなどはアニメならでは。原作読んでないんでいろんな背景が分からないままでしたが、苦労した人が報われる話はたいてい感動するものです。逆に物語内のつじつまを合わせたいなら原作を読むべきなのでしょう、この物語にそこまでの愛を持っていないのでわたしは読みませんが。そして読んでみたらなぜだか怒りをかきたてるような結果になっても、それはそれで楽しんだもの勝ちです。

ハウルに学ぶモテの極意、それは過去と現在と未来の全部をあげてしまうくらいの度量の大きさと、困ったときには転がり込める家の広さであります。東京で買ったら1枚1000円くらいしそうなベーコンがうまそう。料理スキルも大事みたいですね。

そこここで言われていた通り、倍賞千恵子さんは実におばあさんらしい声だったので、できれば娘パートは別の人に担当していただきたかった。声の波長が似ていることで有名な一青窈さんが娘パート、平井堅さんがおばあさんをやったら声のトーンがあって違和感がなかったと思います。平井さんのパートでは性転換しちゃってもいいかもしれません。ハウルのお師匠さんに気に入られちゃったりして、娘の部分ではハウルに恋し、爺パートでは師匠に恋する奇妙な三角関係。そうするとハウルががんばる理由がだいぶ変わってきそうです。

また、美輪様が案外でずっぱりだったのも意外性があって、階段をのぼって汗だくだくになるシーンでは疲れぶりがリアルすぎたので、スタジオジブリは美輪様を本気で走らせたのではないかとさえ思うほどです。声、ほとんど出てなかった。「ふぃー、はひー」。

ラストの疾走感はMetallicaの「Battery」みたいに突っ走って、ばてりー、ばって、りー、でした。おもしろかったです。テレビ放送は悔しいので見ていません。ちぇ。

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2006年09月07日

楢山節考

楢山節考
楢山節考
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東映 (2002/07/21)
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へヴィーだ……。寝る前に見てしまい、ざっさざっさと土をかけられる夢を見る。あれっぽっちの土をかけられただけで人は出てこられないとしたら、昨今の地すべりは手入れのされていない山里を葬る自然の土葬かもしれない。

さて、物語は姥捨て山。幼い頃に読んだ民話では、殿様が「じじばばは役立たずだから山に捨てろ」と御触れを出したが、この舞台では食い扶持が確保できないために自ら編み出した風習になっているところがポイント。結果、住んでいる人々も老後は山に捨てられる、または死にに行くことを前提とした人生を歩むことを意識付けられている。

長男の緒方拳はもちろん、母親の坂本スミ子が見せる有無を言わさぬ迫力がすごい。歯を折って自分が山に行くべき者であることを知らしめる行動力、背負われながらも決して取り乱さない精神力と、母の鑑でした。

姥捨て山の話はあっても姥捨て海の話がないのはなぜだろう。どっぽんと放り込んだら、山よりも死ぬ確率が格段に高くなって物語性が失われるせいだろうか。はたまた山よりも食料が豊富なせいだろうか。

また、あれだけ食料の少ない山間部で、村の懲罰で単に人を埋めて終わらせるものだろうか、とさらに恐ろしいことを考えてしまった。蛋白源にしないのは、風習という形の倫理が村人の行動体系を規定しているため、食人までには至らなかったと読みとったが、どうか。でも禍々しさと生命の象徴、這いずってでも生きてやるという村人の諦めの悪さなどの象徴として蛇がたくさん出てくるので、「芋がなければ蛇を食べればいいのに」とフランス人のようなことを考えてしまった。

2006年09月08日

豚と軍艦

豚と軍艦
豚と軍艦
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日活 (2002/11/22)
売り上げランキング: 35,586

今村昌平監督1961年の作品。戦後特需に沸く横須賀のチンピラと幼馴染の娘を中心に、貧しかった時代の日本を描く。同じ日本語を話していても、ちがう国のような粗野、貧しさ、教育の無さがしみじみ伝わってくる。教育は大事だな。

やくざの手下となって臆病だけれどもひょいひょい働く金次(長門裕行)は、親分の殺しを引き受けることになる。しかし徐々に旗色が悪くなり、言うことを聞いても出世の見込みがないと分かったとき、やぶれかぶれの一策に出る。

金次の幼馴染はしがないバイトでろくに稼ぎがないままふらふらと暮らしていたが、アメリカ水兵の嫁のあてができる。結婚してしまえば一家が路頭に迷うこともなくなるが、金次という想い人がいるのでなかなか首を縦に振らない。

長門裕之以外にもキャストが有名人揃いで、水戸黄門は二人出てるし、丹波from霊界さんは病弱の兄貴を演じており影のあるダンディズムに本気で惚れます。ヒロインの娘さんもはすっぱな感じが出ていて、必ずしも美人の類ではありませんが、この映画にはぴったり。DVDのジャケットでも反抗的なまなざしが印象的で、自分のやりたいように生きるためにもがく雰囲気が出ています。

脚本はあまりすっきりしたものでなく、伏線の回収も消極的で分かりにくい。それでも全体を通して青春ものにあふれる活気、敗戦を経験して妙にすっきりした勢いが伝わってきて、なんだか元気が出る作品です。ラストはカタルシスと共に笑いも誘い、全体のぐだぐだをほんわかとまとめています。

2006年10月21日

メゾン・ド・ヒミコ

メゾン・ド・ヒミコ 特別版 (初回限定生産)
角川エンタテインメント (2006/03/03)

一世を風靡したゲイバーを作ったママが、ある日突然ゲイの老人ホームを建てる。彼女に死期が近づいた時、後継者の美青年(オダギリジョー)が彼女の娘(柴咲コウ)をホームにつれてくる。

監督の犬童一心作品は去年末だったかに「ジョゼと虎と魚たち」を見て、また、見てはいないが原作を何度も繰り返し読んだ「金髪の草原」を撮ってると知り、監督は「聖域」を撮りたいのだなあ、と思ったことです。家、または老人ホーム(といっても海辺のホテルを改装してとても洒落ている)という外敵から身を守るところで、仲間たちとひっそり暮らしていく聖域。聖域には心地よさもあるけれど、それはたいてい現実とはかけ離れたところで成り立っており、現実がそこに浸食してくるときに案外もろく崩れさっていく。その現実は、戦争や暴力じゃなく、主に人の死だ。

オダギリジョーの気障ぶりが板についており、大変好ましい。途中でノンケを目覚めさせる場面があり、目覚める過程の表情にはっとした。新しい世界を見つけたときにピカッと頭の上に電灯がつく感じがくっきり現れていました。あの顔はよかった。

あと、どうして女の人が激情にかられるとやぶれかぶれになるのだろう。あの脈絡のなさが男には理解できない、と言い切ってしまいたい。意味ねーじゃん、それ、と突っ込みました。

2006年12月31日

寝ずの番

寝ずの番
寝ずの番
posted with amazlet on 06.12.31
ポニーキャニオン (2006/10/18)
売り上げランキング: 11173

「寝ずの番」とは通夜の晩に遺体の側で寝ないでいることで、この映画は落語家の師匠(津川雅彦)が亡くなった通夜の晩に弟子たちが寝ずの番をしながら師匠の思い出を語る映画です。

とはいえ、見た後は空に向かって力一杯「あほー」と叫びたくなるような大人のしょうもないエロ願望を描ききっており、苦笑と失笑をしっかり狙った映画でした。そしてその試みはしっかり成功しており、大人のあほかくあるべしという手本のような物語を描き出しています。エロな行為そのものから離れた妄想を明るく描いています。

あえて難癖をつけるならば、師匠の死だけにネタをつぎ込んだ方がより師匠の破天荒ぶりが際立つように思えます。複数の人に焦点を当てたことでそこがちょっとぼけてしまい、もったいない。

それと、堺正明はどこに出てきても堺正明すぎて、ドラマでは却って浮くキャラクターですね。昔の映画やドラマではそんなことなかったと思うのですが、いつの間にか本人のキャラクターを消せない人になっていますね。髪型を変える程度で普段の堺正明像から抜け出せそうに思えるのですが。

★★★★

2007年02月03日

ナイスの森

ナイスの森 The First Contact
レントラックジャパン (2006/10/27)
売り上げランキング: 6365

茶の味」はとても好きだったので、同じような笑いを期待して拝見。

公式サイト(かなり見づらい)

石井克人がやりたい放題やった時はどことなく苦手な印象があったのだが、想像していた通りの苦手さが出ていた。説明のない物語、細かいコマ割りばかりで撮りたいシーンを集めただけのように見える。

10年以上たっているのに、演劇部当時の価値観がわたしにはまだ残っていて、「暗転が多いのは悪い芝居」という規則がこびりついている。演劇で暗転させるのは大道具の配置を変えて場面が変わったことを意味することが多いですが、映画と異なり配置換えには結構な時間がかかるため客はその間何もない空間を見せられて集中力が途切れることになり、なるべく暗転が少ない演出が求められます。本作は映画とはいえ、オムニバス形式というにはあまりにもぶつ切れの映像が多い。疲れるというよりも、その結びつきが弱い。ピコリコ星人の世界と思われる異生物での合奏シーンなど、このタイミングで入ってくる理由も分からないし、それぞれのエピソードが短くて背景を想像する楽しみが薄い。そういう意味では不親切な作りだ。

売り文句になっていた合コンピクニックもかなり弱い扱いで、故意に芯となるエピソードを作らないようにしている節さえうかがえる。その意図がいまいち伝わってこなかった。おのおののエピソードはあと10分延ばしてくれたらおもしろくなりそうなところが語られず消化不良で終わってしまった。ピコリコ星人の合奏(これはこれで妙なエロさはあり、板野真弥の絵はアメリカだと捕まりそう)や部活(これも脇がエロい)とかいらない。この辺はかわいい女子でエロくてアホな絵を撮りたいだけにしか見えなかった。

うーん、笑いのつぼがちがうだけで済ませられない齟齬がありそうで、わたしは肝心なところをつかまえていないような気がする。そのくらい食い違ってしまった残念な作品でした。また、ノッチ(西門えりか)と部活女子(下田奈々)が同じ人に見えたので、自分のおっさん化現象を痛感しました。

2007年06月03日

しゃべれども しゃべれども

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公式サイト

二ツ目の花が咲かない落語家が、なりゆきで喋り方教室を自宅で開くことになってしまい、無愛想なクリーニング屋の看板娘、関西から転校してきて馴染めない小学生、解説の下手な元プロ野球選手に落語を教えて喋り力を鍛えようとする。

この映画、なんといっても見所は小学生の村林くん(名字を発音すると長いので、もっと呼びやすい名前にしちゃってよかった)が演じる「饅頭こわい」である。「こ、これがニュータイプかっ……」と驚かされることまちがいなし。キャーバタバタのくだりなど一瞬たりとも見逃せない。この小学生は落語だけじゃなく、全体を通しても演技力は上位(1位は八千草薫)。他のキャラクターはどことなく怒りっぽいので印象があまり良くないのもあるが。

下町のクリーニング屋の娘を演じる香里菜さんもおもしろかった。いちいちむすっとしているので、ラストにさわやかに笑ったところが引き立つ仕掛けで、よくぞ最後まで笑わずに持たせたと思った。その点、笑いを誘うシーンには登場しないようにうまく組まれていて、制作側のがんばりがうかがえた。そしてラストのすごい超能力発動には笑いをこらえるのがつらかった。その飛び出し、最後まで徹底してぎこちないリアクションが実にういういしい。とにかく映画全体の下町のゆっくりしたイメージに反して一人だけとびきりなんだよな。スタイルも顔つきも。

国分くんの映画の序盤はやや堅い演技が多く、「落語聞いたことあんのかよ」など青春まんがの恥ずかしい台詞まわしがたっぷりだけど、伊東四朗がCMを持ってるタフマンを飲んだあたりから俄然歯車が回り出して見事な達者ぶり。「火焔太鼓」は全編通したわけじゃないけれど、特徴が出るところをうまくつないで、あれなら元の噺を知らない人でもあらすじが分かり、師匠との対比もつかめたんじゃないか。

清く正しく落語を扱いつつ、江戸紹介映画にもなっており、文部科学省お墨付きまちがいなし。なお、わたしが見たのは聴覚障害者に配慮して日本語字幕付きでした。

2008年07月28日

ぐるりのこと

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梨木香歩の同名作と前日までまちがえていたのはお約束。鬱になる話なんて書いてたっけかなー? と1、2年前に読んでいるのに中身を覚えていないわたしが悪い。

この映画の一番すばらしかったのは、夫婦が最初に見せるものすごいすれちがいぶり。せっかく旦那にいいことがあったというのに、遅くなって帰ってきたことに対する嫁のいちゃもんがすごい。定型句で正論を述べ立てる嫁はすでにモンスターと化しており、背景で「ドモアリガット、ミスターロボット」と聞こえていたのはわたしだけではあるまい。この場合はミセスか。あれ、ミズって言わないと差別だっけ。こえー、規則こえーと震え上がるわたしを尻目に、旦那の方は「いやあのその、たたないし」なんて平気の平左で返答している。ここのかけあいがすごく良くて、あと30分くらいバリエーションを見たかった。場内もここの反応がよかった。

逆に言うと以降はどんどん散漫になっていったとも言える。特におかあちゃんの話は詰め込みすぎてそれぞれが薄くなっちゃった。壺、なくていいじゃん。主題が「夫婦といえども互いをわかり合えない」という永遠のテーマなんだから、夫婦だけでこってりやってほしかった、というのは贅沢なくらいいい映画だったのですけれども。

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