誰も知らない
最近の邦画にはとんとうといのだけど、海外で賞を取ったりして評判になったのは知っている一作。これを無条件にほめるにはあまりにもずっしりとのしかかられて、「おもしろい」という評価は簡単にはできない。すごく興味深く、忘れられない作品なのはまちがいないんだけど。
あらすじは長男と母の母子家庭と思われる二人が引っ越すところから始まり、荷物のスーツケースなどにはほかの兄弟3人が隠れている。その後も二人だけの母子家庭を装いつつ、5人での生活が始まるが、やがて母親は外の男と遊ぶのが楽しくなったりして家庭を顧みなくなり、ついには帰ってこなくなってしまう。
イアン・マキューアンの『セメント・ガーデン』も同じように親を失った兄弟たちが好き勝手に生きていく話だけど、あちらはけっこう残虐なシーンもあったりして肉食動物なアンファン・テリブル。日本の作品は農耕民族の血が出ているのか、兄弟は植物を地道に育てたりする。やりたい放題というシーンはあまりなく、淡々と日々をこなしていく姿がいちいち思い出される。金を借りに行って雨に降られるところ、バケツで水を汲む姿、一家そろって布団を並べて寝るところ。それらの生活ぶりは長男が発する台詞にすっとつながっていく。「いっしょに暮らせなくなるから」。
終盤、子供たちの顔つきが変わっていくシーンは、彼らの心の移り変わりが表情にくっきり現れてぐっときます。そして羽田。わたしが自転車で羽田に行き、職務質問受けて45分も拘束されたときは、あっという間に警官が現れて派出所に連れて行かれたので、実際にはあんなスーツケース押して歩いていたらばっちり見つかっちゃうよな、と心とここでつぶやきました。でも、上を向いて飛行機の腹を眺めていると、異星の動物園にまぎれこんだらこんなにでっかい鳥が飛んでいるかもしれない、と思うほどに不思議でうるさくて妙に集中しちゃうところは映画を見ていてとても共感できました。
子供嫌いを自他ともに認める(最近は年のせいか弱まってきましたが)わたしでも全編息をこらして見てしまう。映画というよりもこの異常事態を覗いているような感覚もあり、一方では大人になった今でも映画の中の子供たちのように常に不安を抱えながらもその日その日を暮らしていかなければならない共感も覚えました。誰彼かまわずすすめられる映画じゃないけど、映画を見て内省できる人にはおすすめ。







