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2006年03月14日

恩田陸『小説以外』(新潮社)

小説以外
小説以外
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恩田 陸
新潮社
売り上げランキング: 19,276

この本に限らず、本を好きな人が本について「ひっそり」語る本が好きだ。「ひっそり」というのは語弊があるかもしれないけれど、しょひょーしょひょーした固い書き方(もちろんそれはそれでとても参考になるけれども)よりも、個人的な嗜好をやんわり交えて、世間では評価されてはいないかもしれないけれど、自分はこの本が好きなんですっ、という気持ちが出ている文章が好き。たどったらおそらく「タクティクス/RPGマガジン」の書評や『摩由璃の本棚』がルーツになるんだろう。

恩田陸の小説以外の文章にはこれで初めて触れたわけだけど、思ったより固い文章で驚いた。わたしは小説を書こうと思ったことがほとんどないけれども、恩田陸にとっては逆で、小説以外の文章を書くことや自分を出すことにやや抵抗があるようす。それでもつづられる文章から小説(やビール)を愛する姿勢が見えて、こちらも「もっと楽しくがんばって本読もう」って気持ちになる。

一気にがーっと読み切るんじゃなくて、なんとなく小説読む気にならないな、って時に手に取りたい本。特に今回の収穫はミステリの教養をつけようって気になったこと。他人の死なんてどうでもいーよなんて無頼派ぶってたけど、自分のテーマの一つ「楽しめることは多い方が楽しい」に矛盾するではないかって気づかされた。スタージョンでもミステリぽいと言われる作品も好きだし、エルモア・レナードのドライな感じが好きなんだから、普通のミステリも多少の慣れで好きになれるかもしれない。というわけで今は『黒後家蜘蛛の会』を読んでるけど……、やっぱりアシモフは小説以外の愚痴が楽しいやね。

2006年07月30日

山村修『<狐>が選んだ入門書』(ちくま新書)

“狐”が選んだ入門書
山村 修
筑摩書房

6336と人より2年多く学んだわたしにとって、最後の6年は教養と縁のない生活を送り、ありていに言えば勉強せずに麻雀ばかりうっていたわけで、教養の下地みたいなものがまったくなく、「ああ、わたしは愚かだなあ、経済って食えるの?」と詠嘆する毎日であります。この本は、わたしのように学問へのスタンスがさっぱり分からない人はもちろんのこと、特に何のために勉強するのか分からない学生さんには自分の立ち位置を固めるためにも役立つのではないでしょうか。初めて山形浩生氏のページにたどりついたときにも似た、叡智の一端に触れたような入り口ですが、狐だけに鳥居をくぐれない人もいるかもしれませんな。

とりあげられているテーマは、「言葉」「文学」「歴史」「思想史」「美術」と、どれも「入門書」も教科書的な決まり文句だけではなく、その分野でものを考えるために必要な力、運動の前のストレッチのように脳みそをしなやかに伸ばしてくれそうな本ばかりで、掲載されている本を全部読破することが「自分宿題」の一つになりました。

長年の書評、図書館司書を経た著者の選書眼が如実に伝わるのはあとがき。WEBで検索すると積んだままになっている人が多いようなので、すぐにあとがきだけ目を通してくださいませ。すぐにこの本を読まずにはいられなくなりますので。論より証拠、「狐の書評」への案内では狐さんの書評が読めます。→現在はリンク先が消失しているようです。

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2006年09月03日

風間賢二『ダンスする文学』(自由国民社)

13年前にわたしの好みがほとんど反映されている評論集があったとは! ラテンアメリカ文学をスペイン語研究者以外の視点から読み解いており、特にマジック・リアリズムをエンターテインメントの一つとしてとらえているあたり、まさに「師匠!」と飛びつきたい。

恥ずかしながら、最近ようやく気がついた。ラテンアメリカ文学は面白いというけれど、つまるところ六〇年代<ブーム>の作品だけなのだ、ということに。
あうぅ。それを言ってはおしまいですよ。わたしはある国の小説を読むことで、その背景から小説・文学以外のことにも関心を持つことができ、小説というのは単体で完結するものでなくものごとの入り口にもなりうると信じているので、著者の意見には素直にうなずくことはできない。けれども、エンターテインメント的にはおもしろくない作品とみなされることがあるのは事実だろう。だって、日本だってエンターテインメントな小説ばかりじゃないんだから、他の国だって当然だ。

少々煽りのスパイスがきいたブックガイド。特にマジック・リアリズム関連で次の作家に興味をもちました。
・D・M・トマス
・サルマン・ラシュディ
・ティモシー・モー
・グレアム・スウィフト
・ジュリアン・バーンズ
・ジョン・バンヴィル
・アンジェラ・カーター
・ピーター・アクロイド
・ドン・デリーロ『ラトナーの星』(未訳)

意外にブッカー賞受賞作はマジック・リアリズム的要素があるらしいというのが収穫。ラシュディはともかく、他の作家にも同じような傾向があったとは。また、ラテンアメリカ以外のマジック・リアリズム要素を持った作家リストとしてもたいへん有益です。自由国民社は文学のリスト、カタログ的な本を多く出しているけれど、作品自体を訳したりはしないのな。このあたりの小説を訳したら喜び勇んで買う人は案外多いんじゃないか、と希望的観測を。

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