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2008年11月 アーカイブ

2008年11月16日

リチャード・バーギン『ボルヘスとの対話』(晶文社選書)

ボルヘスとの対話 (1973年) (晶文選書)
柳瀬 尚紀 リチャード バーキン
晶文社
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ボルヘスが70歳を越えてアメリカで講演を行った時に、学生が押しかけてインタビューしたものをまとめたもの。ボルヘスというとラテンアメリカ文学でくくるよりも、あらゆる文学に通じた国籍を感じさせない自由と学問の徒というイメージがある。そしてもちろん本好きに特有の偏狭さもあるんだろうと身構えていたが、本書で学生たちに話を合わせるボルヘスは優しく引っ込み思案でありながら、本当に物語を愛した一人の人間としてインタビューアーや読者に分かりやすい言葉で語る素敵なおじさまでありました。

外部からボルヘスを語るとどうしても複雑な迷路に惑う気持ちとそこに身をゆだねる快楽に焦点を当てられることが多いが、ボルヘス自身が語ると(当然だが)とても自由。難しく言い表そうとして通じづらい専門用語をなるべく排除しているところが、ボルヘスを読んで難しいなと首をひねって本を放り出してしまいそうなわたしの頭にすんなりと入ってくる。トルコ人を描くと嘘っぽくなるけどイタリア人だったらアルゼンチンにいっぱいいるからOKとか、雑誌のページが足りないから短編を一晩でひねり出したとか、神秘と迷宮だけではない等身大のボルヘスに出会える貴重な一冊です。

また、相変わらずラブクラフトが大嫌いで、アルゼンチン人が世界の短編集を編もうとしたときにラブクラフトを選んだ人がいたのでめくじらをたて、

ボルヘス ラブクラフトの非常に不愉快で、かなりいんちきな短編を採りました。ラブクラフトをお読みになったことがありますか。
バーギン いいえ、ありません。
ボルヘス そう、読む理由などありません。

と一刀両断。さらに、

ラブクラフトの短編をとりあげて、世界最高の短編だなどという、それは人をびっくりさせるためにすることです。ラブクラフトが世界で最もすぐれた短編を書いたなどと思う人があるとは考えられませんからね

と追撃。相変わらずよのう、とにたにたしたことでした。というわけで、晶文社が文芸を放棄した今、どこでもいいから再刊してください。

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