« ぐるりのこと | メイン | フリオ・コルタサル「終わりなき旅」@セルバンテス文化センター »

ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(NHK出版)

白の闇 新装版
白の闇 新装版
posted with amazlet at 08.08.14
ジョゼ・サラマーゴ
日本放送出版協会
売り上げランキング: 27758

フィクションでも風景が見えて手触りを感じられ風の音が聞こえるような小説に、わたしは弱い。それは描写が細かければいいというわけではなく、適度なリズム感や適切な言葉の選び方などにも左右される。しかし何より大切なのは読者であるわたしが知覚できるようなことが漏れなく描かれていることだ。本書では突然伝染性の盲目になった人々が陥るパニックをうまく描いている。中心になるのは皮肉にも眼科の医者と、唯一盲にならなかった妻。二人の周囲には初めて失明した男とその妻、セックスの最中に失明した若い女性や幼い少年などが集まり、同じ病に陥った人々による連帯感が生まれる。

これは小説の時点で映像に近いイメージを紡ぐことに成功しており、映画化されたと聞いてもあまり小説からの飛躍はなさそうだ、と思う。とにかくリーダビリティが高く結構分厚くてもあっという間に読める。また、本を途中でおけなくなるほど次々に降りかかる盲目故の災難と、それに振り回される国家と犠牲になる人々の緊迫感がすごい。ノーベル文学賞作家のSF傑作として記憶力の悪いわたしの脳裏にもきっちり刻み込まれました。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.uporeke.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/266