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2008年08月 アーカイブ

2008年08月14日

ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(NHK出版)

白の闇 新装版
白の闇 新装版
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ジョゼ・サラマーゴ
日本放送出版協会
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フィクションでも風景が見えて手触りを感じられ風の音が聞こえるような小説に、わたしは弱い。それは描写が細かければいいというわけではなく、適度なリズム感や適切な言葉の選び方などにも左右される。しかし何より大切なのは読者であるわたしが知覚できるようなことが漏れなく描かれていることだ。本書では突然伝染性の盲目になった人々が陥るパニックをうまく描いている。中心になるのは皮肉にも眼科の医者と、唯一盲にならなかった妻。二人の周囲には初めて失明した男とその妻、セックスの最中に失明した若い女性や幼い少年などが集まり、同じ病に陥った人々による連帯感が生まれる。

これは小説の時点で映像に近いイメージを紡ぐことに成功しており、映画化されたと聞いてもあまり小説からの飛躍はなさそうだ、と思う。とにかくリーダビリティが高く結構分厚くてもあっという間に読める。また、本を途中でおけなくなるほど次々に降りかかる盲目故の災難と、それに振り回される国家と犠牲になる人々の緊迫感がすごい。ノーベル文学賞作家のSF傑作として記憶力の悪いわたしの脳裏にもきっちり刻み込まれました。

2008年08月23日

フリオ・コルタサル「終わりなき旅」@セルバンテス文化センター

IMG_6939.jpg

ずっと気になっていた「フリオ・コルタサル「終わりなき旅」」に行ってきました。場所は奇しくも今月なぜか靖国神社に行ったときと同じ市ヶ谷。かなり道に迷ってたどり着いたセルバンテス文化センターは、純粋にスペイン語の語学教育を行っているところで、1階の書店にも日本語の本は教材以外まったくありません。日本語の本は置いても売れないのかしら。

会場の2階には受付に誰もおらず、つい写真まで撮ってしまいました。10分もあれば全て見られてしまうくらいの広さの会場は、赤と黒に塗り分けられており、コルタサルの言葉と写真が展示されています。旅がテーマとあって、アルゼンチン→パリ→スペイン→イタリア→インド→ニカラグア→アルゼンチンと移動した彼の軌跡をたどることができます。

子供の頃はぷっくりして目がぱっちりで本当にかわいい。それが小学校教員時代になると途端に眉毛もヒゲもごっそり生えてきておっさんとしか形容できなくなってしまい、同一人物とは思えないくらいの変貌。その後パリ(1952〜1958頃)に移住すると、つきあっているアウロラ・ベルナンデスと一緒の写真が多い。ふざけている写真でも目は笑っておらず、まじめそう。インドに行ってもそう。ここでは現地の古い天文台を何枚も撮影しており、白い石を切り出して作られた幾何学的な造形が気に入ったことがうかがえる。

会場の中心にはクッションとヘッドホンがそれぞれ3つ。大写しになったコルタサルとトランペットの写真を見ながらビバップの演奏を聴く。その裏側ではコルタサルが旅に出た時、船から撮影した写真が映像に編集されて流されている。BGMはマーラーの三重奏とシューベルトの五重奏。コルタサルのきまじめな顔にはジャズよりも室内楽の方が似合うような気はする。

いっしょに写っている作家も豪華で、イタロ・カルヴィーノとはピサの斜塔で、バルガス・リョサとはギリシアで、オクタビオ・パスとはインドで、レサマ・リマとはニカラグアで撮影されている。時には家族といっしょに、時には男同士で。メキシコでフェンテスと写っている時だけ、唯一笑っている。実際もこんなに笑わない男だったのだろうか、またはカメラの前では緊張して笑顔が作れなかったのだろうか。

「ぼくにできることと言えば見ることだけだが、見るというのは確かな保証もないのに対象に身を投げ出すことだから、そこに嘘がふくまれることは言うまでもない——『悪魔の涎』」

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