セルバンテス『ドン・キホーテ』(岩波文庫)
岩波書店 (2001/01)
売り上げランキング: 27215
岩波書店 (2001/01)
売り上げランキング: 32930
岩波書店 (2001/02)
売り上げランキング: 32778
岩波書店 (2001/02)
売り上げランキング: 44926
岩波書店 (2001/03)
売り上げランキング: 105481
岩波書店 (2001/03)
売り上げランキング: 79922
読了記念。あいまあいまに読んでいたので読了まで1年くらいかかっているが、その価値はある。続けて読めば1ヶ月もかからないくらいに読みやすく、それでいて先が気になる史上最高の大傑作。昨今の小説を読むうえで古典の素養が必要になるからとシェイクスピアをはじめ岩波文庫に入っている数々の名作の中でも、今読んで素直に誰でも楽しめるんじゃなかろうか。
登場人物は当然主人のドン・キホーテ・ラ・マンチャと従者のサンチョ・パンサ。騎士道小説が大好きで紳士かつ敬虔なクリスチャンであるところのドン・キホーテは、騎士道ぽいシチュエーションがあると自分を投影して周囲の迷惑など顧みずに自らの騎士道を歩もうとする。一方学はないがことわざマシンガンと欲望に忠実な行動力で周囲を笑いに巻き込むサンチョ・パンサ。男二人旅というのは日本の股旅ものや「あぶない刑事」、わたしの好きなランズデールのハッブ&レナードシリーズのように、ボケとツッコミの役割があり、べたべたしすぎない適度な距離感がある。運命次第では敵同士だったかもしれないような、相手を認め合う緊張感。わたしの場合はそこから801的な発想はしませんが、そういう視点が成り立つ友情があるのは認めざるを得ない。
ドン・キホーテはアホなおっさんが風車に突撃するところばかりがクローズアップされますが、実のところは一般庶民と読書家の齟齬を楽しむ物語なわけで、ドン・キホーテの行動よりも会話の妙こそがおもしろい。決して手に汗握るスペクタクルがあるわけではないが、「夕食の会話にふさわしい内容」と呼ばれるにふさわしい倫理的・哲学的な会話がお互いの立場をかけて長々と語られます。最近のライトノベルや映画のスピード感に慣れた人にはちょっとかったるく感じられるかもしれないが、するめはじっくり噛んで味わうように会話もじっくりと楽しむが吉。
後半になると前半の物語が出版されていることが前提となっており、偽物の『ドン・キホーテ』ではセルビアに行って槍試合に出るらしいということを聞いた本物のドン・キホーテは行き先を変えてバルセロナに向かうシーンがあり、すでに語られた自分の運命を知って先回りするあたりはSFの始祖とすら言えるのではないか。そしてドン・キホーテの最期になって至上最上級のメタ仕掛けが炸裂する。ここは6巻きちんと読み通したからこそ味わえる至福の読書。5月の大型連休は終わってしまいますが、これはぜひ教養のためという押し付けがましさなく万人に読んでいただきたい最初の小説にして最高の小説です。








