ジェフリー・フォード『白い果実』(国書刊行会)
国書刊行会
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1998年受賞作。出版当初は山尾悠子訳(ほんとは共訳)ということで話題になって、確かに硬質な雰囲気をたたえてはいるけれども、訳に凝るほどの世界観ではない。冒頭は言葉を選び抜いた豪奢な文章ですが、進むにつれてアクション要素が多くなり、良くも悪くもまっとうなファンタジーでした。
小説の中にある「章」はけっこうくせものだとにらんでいる。わたしは高校の文芸部以来小説を書いたことはないけれど、要はプロットの見出しなわけで、見方によるとそこで区切れてしまうことがあります。1つの章がノルマに見えてしまうのです。この本は350ページ程度の分量で30にも章が分かれていて、同じページ数でもガルシア=マルケスだと章なんてなかったりして、物語全体に自分をゆだねることができるように思えるのです。30もあるとなんだか富士山に登っているようで、「今15章。あと15章か、えっちらおっちら」となんだか作業しているみたい。なので、小説の章分割には反対派です。ページ数すら載せてほしくないくらい。そういう点では電子リーダーは先のページ数が分からないから「このページ数があればもう一つくらいどんでん返しがあるな」などの邪推ができないところは評価できます。
さて、主人公はいやみねたみそねみの「3み」でできており、人の顔から性格やら人生やら将来やらを読み取る観相学の権威。とある村で見つかった白い果実を見つけ出すために、高慢な態度で村娘をかどわかして助手として村人の選別にあたる。この観相学、「額の広さ○○mm、鼻の高さ××mm、よってこいつはランク2、平々凡々でくだらない」などと直感に頼らずきちんと計測するところが笑えた。現実の占い師にも見習っていただきたい。主人公は悪どいくせにマニュアルどおりの生き方しかできない(しかも重度の薬物中毒)保守派なんて、どこの○民党員だ。そんな彼も栄枯盛衰の憂き目を見て世界が変わっていく、その筆さばきは自然で読者を世界観にうまく取り込んでいます。
国書刊行会と山尾悠子がそろったせいで、なんだかありがたくおしいただかないといけないようなものものしさを読む前は感じていましたが、読んでみればハヤカワFTでも遜色のない、ちょっとSFがかったファンタジーですよ。読みやすくて仕掛けのないジーン・ウルフといった感じで、文庫化してもっとたくさんの人に読まれるとよいのではないでしょうか。






