カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(早川書房)
ここ100年の100冊に選ばれるなどとにかく前評判の高い一冊。次回読書部の課題図書として、2回くらいは読もうと思っての1回目。カズオ・イシグロって生まれは日本人だし「English is a mystical place」なんて言ってるから、「Lost in translation」英国版くらいに甘く見積もっていた。英国でとまどう日本人の視点を元にした、そこはかとなくリアルな小説みたいなもんか。そして今、己の甘い読みを深く反省している。
この本について語る言葉がまだ明確化していない。全体から受ける印象は穏やかな諦観。定められた運命に翻弄される人々。読者のわたしにとってはどこか風変わりなのだけど、一人称の語り手にとっては常識の世界。二つの視点から眺めることになる一つの世界には静かな穏やかさと、子犬がかけまわるような無邪気さ、そして明言されていないとても醜悪なものがある。
読んでいるとき脳裏には『アルジャーノン』がつきまとっていたけれど、Guardianでは比較としてマイケル・マーシャル・スミス『スペアーズ』があげられていたように、この本ならではの個性よりも、人間を使った実験についてのやや残酷さを含んだ過去の物語を思い出させるようです。これも物語の構成上語られない背後の世界を想像させるように書かれているので、そこに読者にとって近い物語がするりとおさまるようにできている。
読了後もずっと気になっているのが、「Never let me go」というタイトルは誰から誰への呼びかけなのだろうか。トミーからキャスへ? キャスから提供者の誰かへ? はたまた提供を受ける誰かの叫び? 「離さないで」とは言うけれども、この小説で生に執着する人物はいない。みな理由があって人生を閉じ、それを運命として受け入れているように見える。だとしたら残っている人物による「Never leave me alone」でないのはなぜか? そのへんは読書部で聞いてみたいと思います。
というわけで、第14回読書会カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』は7/1(土)に開催です。詳しくはmixiで。




