アレクサンダー・ガブリリュク ピアノ・リサイタル
オペラシティでのコンサートにお誘いいただいた。感謝感謝。
グレイの髪で憂いのある顔、力強さばかりを押し出さないが若さにあふれ輝いている。とポスターを見た第一印象そのままの演奏だったけれども、自分の想像よりもずっとあらゆるレベルにおいて質が高かった。
まずはブラームス「3つの間奏曲」「2つの狂詩曲」。実はピアノを実際にライブで聴くのは学校以来で、ブラームスのピアノもはじめて。ブラームスのメロディって最近のロックにも通じるところがあると勝手に思いこんでいるのだけど、この曲でもそれは感じた。だけど、いかんせん地味。つかみから間奏曲ってどうなの? とクラシックに疎いわたしは疑問だった。
でもってやっぱりピアノの音はライブだと全然ちがうね。前にチャイコフスキー「悲愴」を聴いたときには正直CDでもそれほど変わらないと不遜なことを思ったものですが、ピアノはちがう。消音ペダルを踏むまでの漂う響きは、素晴らしい会場と演奏者と楽器がそろわないと体験できないものですね。
次のショパンでは同行の某さん曰く「弾き慣れている」のが分かる軽やかさと鮮やかさ。練習曲10-8できらめくドリーミーな音色かと思うと、10-6では寒い曇天のような落ち着き、10-12では超盛り上がって途中だというのに拍手がおきていましたよ。25-7、25-5もとにかく鮮やかでキレがあるキリン一番搾りという印象。
メインは展覧会の絵。展覧会の絵っていったらELPなわたしだけど、ピアノ版も気に入りました。直前にフリッツ・ライナー指揮のオーケストラ版で予習していたけれど、オーケストラだと赤い絨毯に総出でお出迎えなゴージャス感があって今ひとつ好きになれなかったのだ。ピアノのシンプルな音が一人で夜の展覧会を巡るような特別な空間に感じられた。あと、ガヴリリュクは比較的早く弾いていたんじゃないかな、それでメインテーマがおおげさじゃなくシンプルに感じられたのかもしれない。
アンコールは長いよ、というのを聞いていたのでメインが終わってもどっしり落ち着いて。
モシュコフスキーという柔らかそうな人の「スパークル」はまさにスパーク! ラフマニノフのプレリュードとヴォカリーズも地元の強みを生かして余裕の演奏。でもってラストはメンデルスゾーン作曲/ホロヴィッツ編曲の「結婚行進曲」! なんでもホロヴィッツが認めた人でなければ演奏できず楽譜も入手できないんだとか。4回目の結婚おめでとうと顔が引きつるような脂ぽい曲だけど、あっさりさっぱり華麗にさばいていくガヴリリュクさんでありました。
アンコール途中で席を立つ人がいたのだけど、別に会場を出るわけでもなく扉近くに立っている。どうやら演奏後のサイン会が目当てらしいのだけど、なら一番後ろに行けよ。演奏者が出入りする扉が閉まるまでは席に座っていてほしいなあ。
ピアノを静謐な空間で集中して聴くのは確かに特別なことで、普段使わない脳を使ってる実感があったな。キーワードは「コンクール受賞からしばらくたってあまり騒がれていない」「若い男子のパワー」「お値段安め、技巧高め」「夏じゃなくて冬」だな。


